ロースター萩原 ホンジュラス訪問記録| Part.4 念願のEl Doradoエリア 編
3月26日(木)〜4月2日(木)まで、ロースターの萩原がホンジュラスへ産地訪問へ!
マガジンでは訪問の記録として、お邪魔したエクスポーターや農園をご紹介します。
すでに今年2回目の生産地訪問。旅のストーリーを何編かに分けてお届けいたしますので、ぜひ最後までご覧ください!
SanVicente での買い付けカッピング
まずは朝ごはん
2026年3月29日
今日もいつものEl Dorado Cafeで朝食。脂っこい食事が続いていたので、この日はグラノーラとフルーツで軽めに。パパイヤが美味しい!
朝食はフルーツ!
SanVicenteのオフィスに戻る前に、オフィスの目の前にあるAngelの乾燥棚へ。ダークルーム、アフリカンベッドと状態をチェック、進捗は悪くなさそう。SYU・HA・RI買い付けのPacasや、昨年買わせてもらったEl TangoのGeishaもありました。
ダークルームの前のスペースはコンクリートパティオになっていて、前日の雨のせいで濡れている状態。ここではAngelの知り合いから頼まれたNaturalを作っていたらしいですが、雨によって濡れてダメになってしまったとのこと。
ドライミルには今日もたくさんのコーヒーが運び込まれていました。
この日もラボでカッピングセッションからスタート。Santa Barbaraエリアから3セッション、計38ロットをカッピングしました。今回の買い付けツアーで最も重要なカッピングになります。
カッピングはブラインドで行い、1サンプルずつコメントとスコアを共有していきます。生産者名と品種、プロセスなどの情報が開示されるのはコメントすり合わせのあとなので、毎度ドキドキします。継続して買わせてもらっている生産者のコーヒーに良い評価をつけているとホッとするし、その逆も然り。意外なロットを評価していたりとさまざまです。
ただ、天候不良で収穫乾燥が遅れていることもあり、この日のサンプルは第1収穫がメイン。生産者によっては4~5回に分けて収穫を行いますが、遅い収穫になるにつれて良くなることも多いそう。そもそもまだサンプルがない生産者もいるので、このカッピングで買い付け全てを決めることはできません。すべてのサンプルが出揃った時点でSHU・HA・RIにサンプルが届き、そこで最終的に買い付けるロットが決定します。
ただ、「これは是非買いたい!」と思えるロットにも出会うことができました。価格などが出るのはまだ先ですが、SYU・HA・RIを通じて上手くコミュニケーションを取りながら進めていきたいと思っています。
Santa Barbaraのカッピングセッションは結局14時くらいまで続きました。ゆっくり昼食をとる時間がないので、カフェでテイクアウトしてから生産者に会いにいくことに。
この日行くのはEl Doradoというエリア。THE COFFEESHOPで付き合いのある生産者たちの農園がたくさんある地域で、とても楽しみです!
念願のEl Doradoエリアへ!THE COFFEESHOPではお馴染みの農園も訪問
Victor Paz
この日最初に伺ったのはVictor Paz。THE COFFEESHOPではかれこれ3年継続して買っていて、今回のツアーで最も会いたかった生産者の一人です。VictorはAngelの従兄弟にあたり、共同で農地もやっています。午前中のカッピングでもその農地のGeishaが並んでいて、比較的良い感じでした。
しかし、せっかく念願のVictorの農園に行けたにも関わらずこの日も土砂降りの大雨…。あまりゆっくりと見て回ることができなかったのが残念ですが、いつもTHE COFFEESHOPで焙煎しているコーヒー豆の農園を見ることができて嬉しい瞬間でした。この日はまだ収穫の真っ最中で、雨の降りしきる中でもスタッフ7人で作業を進めていました。みるからにハードそう…。
事前に聞いていた話では、Victorはかなり陽気なおっちゃんということでしたが、会ってみると普通に愛想の良いおじさんという雰囲気。何年も継続して買わせてもらっていることを伝えると嬉しそうに笑ってくれて、何度も握手をして何枚も写真を撮りました。
Victorの農園を初めて訪問させてもらって話をさせてもらいましたが、結局のところ彼のコーヒーがなぜあんなに美味しいのか、なぜ僕の好みに合うのか、その理由はよくわかりませんでした。良いコーヒーが生まれる条件というのは、一度訪れただけではわかるはずがないほど複雑なもの。それでも実際にお会いすることで、またこれからもずっと買い続けたいと思えたし、また気持ちよく晴れた日にこの農園を訪れたいと思ったので、それだけで本当に来れて良かったと思っています!
Angel Arturo Paz | Itacayo
次に向かったのはAngelが所有するItacayoという農園。Angelは全部で6つの農園を持っていますが、その中でも1番標高が高く、コンペティション用のロットや17の新しい品種の栽培テストを行なっているところです。
Itakayoとは"Bigfoot"を意味するらしく、農園の中に小さい洞窟がありそこにビッグフットが棲んでいるという逸話があるようです。実際にここにはサルが生息していて、Angelが関わっている森林保護のプロジェクトの一環で、自然林を残しながらコーヒー栽培をしていました。Itakayoの敷地のうち半分以上は手をつけていない森になっているため、これからさらに森を増やして繋ぎ、サルたちが生息できるエリアを増やすのが目標だとか。
自然林がもたらす影響
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自然林はコーヒー栽培にも良い影響があるとされています。コーヒーの木を直射日光や風から守ってくれるシェードツリーは、今のホンジュラスの環境(気温上昇や時期違いの大雨発生など)では必要不可欠になってきています。実際に見てもシェードの下と外でコーヒーの木の葉のつき方、チェリーの熟し方が全然違いました。
また植生の多様性を図ることで、微生物の多様性にも繋がっています。この取り組みについてはホンジュラスツアー中、随所で耳にすることになるのですが、ここItakayoでもTim Wendelboeとプロジェクトを進めているそうです。
Itakayoの入口から3時間山を登ったところには湧水があり、そこから精製に使う水を引いてきています。そこへは自分たちでホースを引いて登っていき、水を確保しているのだといいます。
農園の入口付近には水を貯めるための巨大なタンクがあります。これは1960年にAngelの祖父がWashedを作るために使っていたもの。家族のコーヒー生産の歴史を象徴するようなタンクの前で、Angelと写真を撮らせてもらいました。
Ariel Gomez
Itakayoから10分ほど車で山を下ったところには、これまでツアーにずっと帯同してくれているAriel Gomezの農園があります。
ArielはもともとEl Doradoのカフェスタッフだったところから、やる気と能力を買われてSanVicenteのスタッフに登用され、農園を分けてもらって生産者になったそう。コーヒー生産者は親から農地を相続するか、他の事業で成功してから農園を買うか、どちらかのパターンが多いなか、こうした若い優秀なスタッフをフックアップしてチャンスを与えるというのはとても珍しい話。
やる気に満ち溢れた優秀なArielはまだ33歳!子どもも生まれたばかりだそうで、これから先の活躍にも大きく期待したい生産者です。
午前中のカッピングにも彼のコーヒーは並んでいて、特にSL28が良い印象でした。ただ、カップが良くても病気がちな木が多く、収量はかなり落ちてしまっているそう。どう対応するかAngelと相談中だとか。
ここではPacamaraも育てていますが、これもあまり上手くいっていない様子。聞けばSanta Barbara特有の気候で気温が低く、葉っぱが大きく多く出過ぎてしまうことが原因だといいます。コーヒーの木は寒すぎると身を守るためにチェリーではなく枝を選択を守ろうとしてしまうそうで、そのぶん実の付きが悪く収量が下がってしまうようでした。
「良質なコーヒーの栽培には高標高で、昼夜の寒暖差が大事!」とよく言われますが、当然のことながら農業であるコーヒー栽培においては品種ごとに適した環境があります。品種の風味特性が強いVarietyでも、適した栽培環境でなければうまく育つことができません。Santa BarbaraでいえばPacamaraを育てるには、もう少し低標高の方が向いているようです。
Arielの農園のすぐ横にはウェットミルがあり、見てきたVictor、Angel、Arielのコーヒーのプロセスをしていました。ここはとても綺麗で清潔に整えられている印象でした。ここでもパルプは灰と落ち葉とチャフを混ぜてコンポスト、肥料にしていました。
ここでは品種やロットによって発酵のレシピを統一して管理しており、
・カティモール系は72hアナエロビック→パルピングしてタンクで72h発酵(比較的長めの発酵時間だが気温が低いのでそこまで進まない)
・SL28やPacas、Geishaなどポテンシャルが高い豆はレストせず
収穫日にパルピング→36h発酵→洗いにかける
・コンペティション用のGeishaなどは48hチェリーでアナエロビック→パルピングして48h発酵
と流れが決まっています。このように品種によって発酵プロセスを固定することで、クオリティが安定するとのこと。また、収穫日ごとにロット分けされるので、その日の気温や湿度などで自然と差を作れるのも利点だという話でした。
乾燥は、AngelとArielのロットはSanVicenteのオフィス前にある屋根付きアフリカンベットに持って行きます。Victorは今年から自分の乾燥台を作ったそう。乾燥には最低15日かけてスロードライさせます。毎年買っているVictorのコーヒー、乾燥棚が変わったことで品質にどのくらい影響が出るのか期待と不安がありますが、ロットの完成を楽しみに待ちたいと思います。
Miguel Almand Sagastume
Miguel Almand Sagastumeは以前にも買わせてもらったことがある生産者。El Dorradoに着いたときから1日一緒に行動していました。農園があるのはItakayoのさらに上の区画で、恵まれた標高があります。かなり素朴なおじさんといった印象で、口数も少なくひとりみんなから少し離れた場所にいることも。あまりガツガツとやる気があるタイプではなさそう。
生産量はかなり小さく、全部合わせても10〜15BOXくらいしかないため、以前TCSで購入できたのもたまたま余ったものを買わせてもらえただけ。いつもは限られた常連のロースター分で終わってしまうらしいです。そんなにやる気に満ちた生産者ではなさそうですが、不思議と出来上がるコーヒーは素晴らしい風味だったのをよく覚えています。
チェリーは収穫した日にパルピング→翌朝まで発酵層で12時間くらい発酵→翌朝には洗うというシンプルなもの。去年までは別の場所の屋根付きアフリカンベットで乾燥させていましたが、今年はそこが壊れてしまい、庭先のパティオで乾燥させています。そのため乾燥期間は8日間くらいと去年の半分くらいの日数。昨年までと乾燥工程がかなり違うので、これがどう影響してくるのか気になるところです。
次回に続きます!
この日訪問させていただいたEl Doradoエリアにある農園は、VictorやMiguelなどTHE COFFEESHOPで買わせてもらっている生産者ばかり。AngelのItakayoやArielの農園はまだ買えていませんが、午前中のカッピングではどちらも自分のスコアボードでは高い評価をつけていました。知らず知らずのうちにこのエリアのコーヒーばかり選んでいるのは、ここの味が好きなんだ、ということに他ならないと思います。まさしくテロワール!
これからもおそらく買い続けるであろうEl Doradoエリア、また何度でも戻ってきたい場所でした!
WRITER
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Daito Hagiwara
THE COFFEESHOPロースター
THE COFFEESHOPにて取り扱うすべてのコーヒー豆の仕入れと焙煎・クオリティコントロールを担当。日々焙煎の研究とコーヒー豆の品質チェックを行う。2024年 Next up Roasting Championship優勝。2025年 焙煎競技会 ROAR OF THE ROAST 2025 優勝
毎週木曜日20:00〜Instagram、YouTube、Xスペースでライブ配信中!
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