なぜコーヒーの有名店は「浅煎り」が多いのか|広がる日本のコーヒー文化について

コーヒーの専門店が増える近年ですが、初めて行った方はコーヒーの種類の多さに驚くと共に、浅煎りのコーヒー豆が多いことにもびっくりされるかもしれませんね。
特にスペシャルティコーヒーのお店では浅煎りのみを取り扱う店舗もあるため『好みに合わない…』と少し敬遠される方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、なぜ浅煎りのコーヒー豆を取り扱うお店が多いのかを、THE COFFEESHOPロースターの萩原が解説します。
『酸味があるから苦手』と思っている方にも一度読んでいただきたい内容ですので、ぜひ最後までご覧ください!
サードウェーブと呼ばれたコーヒーのトレンド
2015年にブルーボトルコーヒーが日本に初上陸してから一気に広まった〈サードウェーブ〉。
ハンドドリップを主体とした抽出でコーヒーを提供するスタイルが基本で、産地や生産処理・品種などの違いを楽しむコーヒーの文化が日本でも始まりました。
いわゆるスペシャルティコーヒーの楽しみ方というものが徐々に日本に浸透していったわけですが、この〈スペシャルティコーヒー〉の専門店が近年増えてきていると思います。
THE COFFEESHOPもスペシャルティコーヒー専門店として10年以上皆様にお世話になっていますが、業界の流れをずっと見てきている中で、特に浅煎りだけを取り扱うお店も多いように感じています。
ではなぜ品質にこだわる専門店では浅煎りが多いのか、次項から解説していきます。
サードウェーブ以降で浅煎りの豆が増えた本当の理由|酸味のあるコーヒーが人気なのか?
スペシャルティコーヒーを楽しむ上での醍醐味は、なんといっても〈素材ごとの味わいの違いを楽しむ〉ということ。
コーヒー豆はアフリカから東南アジア、中南米まで幅広く栽培されている植物ですが、産地・品種・精製方法・焙煎・抽出など様々な工程で、色々な味の違いが生まれます。
その味の違いを楽しもうというとき、浅煎りの方がより明確に味の違いを感じることができるため、スペシャルティコーヒーでは浅煎りが主流になりました。
焙煎という工程は、コーヒー豆の味を決定する重要なパートです。
火を入れれば入れるほど成分の分解が進み、同時に焙煎による味付け・風味付けがなされていくため、コーヒー豆の個性という意味ではポイントを感じにくくなります。
逆に浅煎りの場合は生豆のポテンシャル(品質)が大きく関わり、生豆の時点で劣化(乾燥や湿気などはもちろん、栽培過程での劣化も)している豆は浅煎りでは美味しくないことも。
(もちろん、深煎りの場合でも生豆のポテンシャルは非常に重要。あくまで浅煎りの方が、よりその重要度が高い、という意味合いです)
品質がいい豆の味の違いを楽しむスペシャルティコーヒー業界で浅煎りが主流になるのは当然とも言えますね。

実際の生豆買付け前の品質チェック場面。
カッピングで豆のポテンシャルを確かめていくため、サンプルローストも浅煎りのことがほとんどです。
コーヒー豆のポテンシャルを引き出す「ロースター」の仕事
繰り返しになりますが、スペシャルティコーヒーを楽しむ上で素材の違いを感じるためには〈焙煎〉という工程が非常に大切です。
浅煎りと一言で括っても、使用する焙煎機・火の入れ方によって、ロースターごとの個性が出ます。
同じ生豆を使用したとしても、焼き方が違えば味の印象がガラッと変わり、生豆のポテンシャルのうち、どういう面を引き出していくのかが、ロースターの腕によって決まってくるわけです。
例えばTHE COFFEESHOPの場合、焙煎する時に最も重要視しているのが『コーヒー本来の甘さを感じる』ということ。
当店は浅煎り〜深煎りまでを取扱っていますが、どの豆であっても共通する項目です。
そのため、豆の中までしっかり火を入れることを大切に、焙煎のプロファイルを組んでいます。
「焙煎」とは、ざっくりいうと外から熱を加えて豆の中にある水分を飛ばしていく作業ですが、高火力で一気に火をかけすぎてしまうと、豆の外側と内側で熱の差が生まれて焼きムラができてしまったり、外側だけ焦げて中の水分は残ったまま、という生焼け状態になってしまいます。
こうなると、コーヒーの甘さを感じる要因である口当たりや香りの成分が十分に発達せず、THE COFFEESHOPが狙う美味しい味にはなりません。
『火力(熱量)の調整をしながらしっかり豆の中まで火を通すことで甘さを引き出す』
これがTHE COFFEESHOPが大事にしている焙煎の基本です。

コンペティション(競技会)によってロースターの技術は年々向上している|参加する意味とは
コーヒーの世界にはいろいろなコンペティション(競技会)がありますが、もちろん焙煎に関するものも開催されています。SCAJ主催のJapan Coffee Roasting Championship(JCRC)がその主たるものですが、近年ではコーヒーインポーターやエクスポーター、スペシャルティコーヒーロースターなどが開催する、マイクロな競技会も催されています。それらのなかには競技会ごとにコンセプトや目指す目標がはっきりしたものも増えていますね。
競技会への参加は、日頃のお店での焙煎・抽出に還元できたり、他の参加者の方の焙煎・審査員の方からのフィードバックをもらうことで、新しい焙煎のアプローチや味の表現の仕方を学ぶ機会になるため、その意義を年々強く感じています。
昨年参加した〈Next Up Roasting Championship 2024〉ではありがたいことに優勝という最高の結果もいただけて、喜びだけではなく今後の自信やさらなる焙煎技術向上への意欲にもつながりました。
大小関係なく品質を求める競技会が増えていくことは、スペシャルティコーヒーの普及に伴ったメリットの一つであると感じています。

有名店に浅煎りが多いのは、良質なコーヒー豆の仕入れと、それを適切に扱えるロースターがいるから
焙煎という仕事のご紹介も踏まえつつ、スペシャルティコーヒー有名店ではなぜ浅煎りが主流なのかを解説してきました。
スペシャルティコーヒーは、ポテンシャルの高いコーヒーとして様々な楽しみ方ができますが、特に基本である素材による味の違いを楽しみたい時には、やはり浅煎りがわかりやすく違いを感じていただけるはず。
また、どんなに品質のいい豆を浅煎りに焙煎したとしても、焙煎技術が伴っていなければ、ポテンシャルを十分に引き出すことはできません。
スペシャルティコーヒーでいわゆる有名店となっているお店で浅煎りが多いのは、ポテンシャルを最大限引き出せる技術を持ったロースター(焙煎士)がいるからだと考えています。
嗜好品であるコーヒーは、味の好き・苦手で判断していただくのが一番わかりやすいですが、なぜ有名店では浅煎りが主流になりつつあるのかを知っていただくことで、まず一度試していただくきっかけになれば嬉しいと思っています。
THE COFFEESHOPの店頭にお越しいただける際には、味のお好みのヒアリングなど対応しておりますので、ぜひお気軽にお声掛けください!
WRITER
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Mayuka Jimbo
THE COFFEESHOPバリスタ・ストアサブマネージャー。
富ヶ谷のロースタリーROAST WORKSにてドリンクを提供。フードペアリング担当。レシピの改善や、抽出技術の向上に日々取り組んでいる。
毎週日曜8:45〜はInstagramとYouTubeで15分間のライブ配信中!
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