【冷めても美味しいコーヒーの条件】高品質なコーヒーで味覚と温度の相乗効果を楽しもう!

2025.09.12
SHERE

コーヒーの飲み頃について考えたことはありますか?

「やっぱり抽出後すぐに飲むのがいい!」という方や「淹れたてだと熱すぎて飲めない…」という方も色々あると思います。

THE COFFEESHOPでは以前にも、コーヒーは冷めても美味しく感じるのか?や、コーヒーの再加熱に関してマガジンを投稿してきました。

今回はよりコーヒーが美味しく感じる温度帯について深掘りしていきます。

美味しさと温度の関係|ポイントは舌が感じる味覚以外の感覚

これまでのマガジンでも何度か取り上げてきましたが、コーヒーに限らず、人間の舌は「美味しい」と感じやすい温度帯が存在します。

その温度はおおよそ60℃前後とされており、これを超えると味覚の感知能力が鈍くなっていくそうです。

たとえば、100℃近い熱湯を使ってコーヒーを抽出した場合、抽出の時間や周囲の環境条件によって多少の差はありますが、出来上がったコーヒーの温度は大体80℃程度になります。

この温度では、香りは高温による気化で立ちやすくなる一方で、舌が味をうまく感知できません。

つまり、香りは感じても、肝心の味がわかりづらくなってしまいます。

そのため、実際には抽出直後の熱々の状態で飲むよりも、少し時間を置いて60℃前後まで冷ました方が、酸味・甘み・苦味といったコーヒー本来の味がよりクリアに感じられるようになります。

普段から熱いコーヒーをすぐに飲んでしまうという方は、少し冷ます時間を意識するだけで、驚くほど味の印象が変わるかもしれません。

ちなみに、これはコーヒーに限らず、食の世界全体にも通じる話です。

ロースター萩原が以前、中国でミシュラン一つ星を獲得しているレストランで食事をした際、小籠包が意外にもぬるめの温度で提供されたそう。

一見、熱々で出てくるのが当たり前のように思える小籠包ですが、舌がやけどするような熱さでは甘みや旨味が感じづらくなってしまいます。

このレストランでは、あえて温度を下げることで素材の味をしっかりと感じられるようにしていたそうです。

萩原自身も驚き感動したとのことでした。

このように、「美味しさ」は単なる味付けや素材だけでなく、「温度」も大きく関わっている要素です。

抽出方法別|コーヒーの出来上がり温度を調査

今回は、100℃の沸騰したお湯で抽出したコーヒーが、飲み頃とされる60℃まで冷めるのに何分かかるのかを検証していきます。

抽出直後の温度と、味を感じやすい温度帯への変化を確認しながら、より美味しく楽しむためのヒントを探していきましょう。

検証条件

①300mlの沸騰したてのお湯を全量使って抽出

②器具は全て保温した状態で使用

検証結果|①ハンドドリップ

抽出完了時間:2分45秒 出来上がり温度:81.4℃ 

抽出完了から約14分26秒後、コーヒーはちょうど飲み頃とされる60℃に達しました。

今回は100℃の沸騰したお湯を使ったため、抽出直後の温度も高めでしたが、一般的によく使われる90℃程度のお湯でも、完成時の温度はおそらく70℃台後半になると考えられます。

〜抽出直後の味わい〜

・香りがはっきりしている

・酸味が少しシャープな印象

・後味が短く感じる

さっぱりしているというと聞こえがいいけど実際の味と言われるとよくわからないというのが感想でした。

〜60付近の味わい〜

・香りの印象よりも、酸味や甘さの質がわかるようになった

・後味が長く続く

検証結果|②フレンチプレス

抽出完了時間:4分 出来上がり温度:78.2℃ 

抽出完了から約12分48秒後に、飲み頃とされる60℃になりました。

抽出時間がハンドドリップよりも長くなったため、その分出来上がりの温度も若干低くなっています。

こちらも90℃程度のお湯を使用した際は70℃前半〜60℃後半程度に落ち着くはずです。

〜抽出直後の味わい〜

・甘さや酸味の印象が弱いため味が薄く感じる

・味を感じにくいため、微粉のザラつきがより気になった

〜60℃付近の味わい〜

・舌の上に味がちゃんとのっているような印象がある

・アロマ(コーヒー油分)のおかげか口当たりが熱い時よりも滑らかに感じる

・後味が長く続く分、甘さの質がわかりやすい

「カッピング」での品質チェックも熱々では難しい

お店で行う品質管理のための「カッピング」も、実は少し温度が下がってから始めるのが一般的です。

具体的には、お湯を注いでからおよそ12分後あたりからコーヒーをすすり始めます。

これは単に熱くて啜りにくいという理由だけではなく、カッピングでは香りはもちろん、酸味や甘さ・口当たり・後味といったさまざまな要素を総合的に評価する必要があります。

高温すぎると、これらの味わいや質感を正確に感じ取りにくくなるため、温度がある程度下がった段階でテイスティングを行うことはコーヒーの本質的な美味しさを見極めるために非常に大切であり、プロの現場でも取り入れられている工夫のひとつです。

「淹れてすぐよりちょっと冷ましてから」が美味しい|高品質なコーヒーは温度変化に強い

上記の検証とカッピングの方法でご紹介の通り、抽出直後のコーヒーは意外と温度が高く、人間の舌が美味しいと感じる温度帯とは離れていることが確認できたと思います。

ということは、冒頭でお伝えした小籠包の実例の通り、少し冷めてからのコーヒーの方がより美味しさを確実に感じられるということ。

とは言っても抽出した後に温度が下がるのを待つだけなのはもったいないので、熱い時は香りを、少し冷めてきたら甘さと口当たりをなど、温度帯によって変わる味わいを楽しむことがおすすめです。

スペシャルティコーヒーは品質が担保されていますが、その評価基準の項目の一つであるクリーンカップは、温度変化ごとの味を楽しむ上で欠かせません。

コーヒーが冷めても美味しく感じられるのは、雑味の少ない高品質な豆の証です。

ぜひ一度、1杯のコーヒーの温度変化に目を向けて楽しんでいただけると嬉しいです!

WRITER

Mayuka Jimbo

THE COFFEESHOPのMAGAZINEコンテンツ、オンライン担当。

スペシャルティコーヒーの知識だけでなく、レシピの改善や、抽出技術の向上にも日々取り組んでいる。

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