世界一のドリッパーが生まれる場所、KOYO BASEに行ってきました!
スペシャルティコーヒー好きの方ならば一度は目にしたことがあるドリッパー、ORIGAMI。持ってるよ!という方も多いかもしれませんが、実際にどんなふうに作られているかは、ご存じない方が多いのではないでしょうか。少し前になりますが、THE COFFEESHOPの萩原・百崎が、世界を獲ったドリッパー・ORIGAMIの生産地、KOYO BASEに行ってきましたので、その模様をレポートさせていただきます!
世界一のドリッパーが生まれる場所、KOYO BASE
KOYO BASEがあるのは全国有数のうつわの産地、岐阜県土岐市。名古屋から在来線に揺られて約50分、JR土岐市駅からさらに車で10分ほど行った、小高い丘の上にあります。
ここ一帯では日本の陶磁器のうち50%以上が生産されていて、KOYO BASEを運営する光洋陶器株式会社は創業から60年を数える老舗として、自社一貫生産でさまざまなうつわを作っています。
KOYO BASEでは実際に陶磁器を作っているファクトリーのほか、お皿やカップなどの商品が購入できるショップ、地元の食材を使ったランチやコーヒーがいただけるカフェが併設。
工場見学をしたあと美味しいランチとコーヒーを飲み、気に入ったうつわを買って帰れるという、充実した1日が楽しめる複合施設になっています。
光洋陶器の名がコーヒー業界で知れ渡ったのは、なんと言ってもORIGAMIドリッパーの登場がきっかけです。
このORIGAMIドリッパーは抽出中のお湯抜けが良く、また陶磁器ながら薄いボディのおかげで不測の温度変化が起きづらい特徴があります。
2018年のJapan Brewers Cup決勝では、中井千香子選手がORIGAMIを使用して見事優勝。
また、翌年のWorld Brewers Cupでは中国代表のJia Ning Du選手がORIGAMIドリッパーを使用して優勝し、一躍その名が世界中に知れ渡ることになりました。
いざ、工場見学!
今回、KOYO BASEで提供するコーヒーとしてTHE COFFEESHOPの豆を使っていただけることとなり、インストールのために訪問させていただきました。主な目的はTHE COFFEESHOPの豆に合わせた抽出レシピの設計と調整だったのですが、訪問の初日には光洋陶器の工場見学もさせていただきました!
実際に工場の中に入ると、ゴウゴウという機械の駆動音と、土とエンジンオイルの匂いが立ちこめる、いかにも工場といった雰囲気。ここでは陶磁器製造を原料から順々に見ていくことができます。
まず初めに、素材となる土を水と一緒に練る作業。土練機という機械を使います。写真右側に写っている棒状のものが練られてできた粘土で、1本あたり約20kg。この工場では1日あたり約4トンもの粘土を使うそうです。
粘土は使う分だけカットされ、うつわの形ごとに型に入れられ、上からコテという機械で挟み込むようにして成形されます。
シンプルな丸い形のうつわは型と自動で動くコテで作ることができますが、楕円や四角など変わった形のものは、職人さんの手作業で成形していきます。簡単にやっているように見えますが、主にベテランの職人さんだけが作業にあたる、難しい作業です。
ORIGAMIドリッパーを生み出す鋳込み成形
ORIGAMIのようなより複雑な形は、『鋳込み成形』というまた特殊な製法で成形されます。
先ほどとは違い、鋳込み成形に使う素材は水分の多いドロドロした粘土。これをORIGAMIドリッパーの形をしたオス型とメス型の間に流し込んで形を作ります。
この型は石膏でできており、水分をよく吸収します。型にドロドロの粘土を流し込んでから20分もすると、乾燥して取り外せるようになります。この一括成型によって、複雑な形のORIGAMIドリッパーでも個体差が少なく作ることができるそうです。
素焼き→絵付け→釉薬→本焼成
乾燥させて型から取り外したうつわは、次に『素焼き』という工程に移ります。まだ柔らかく手で簡単に割れる硬さのうつわを約800度の窯で焼き上げ、硬さを出していきます。窯は約50mの長さのあるトンネル状で、24時間休みなく稼働し続けています。
工場見学をさせていただいたのは金曜日。窯の手前には土曜日と日曜日に焼く分も含めて、膨大な量のお皿が並んでいました。
素焼きが済んだものは薄いベージュ色をしていて、KOYO BASEの壁の色はこの薄いベージュをイメージして塗られているそうです。
素焼きされたうつわには、それぞれデザインごとに絵付けがされていきます。複雑なデザインの模様でも、パット印刷というプリント方法を使って綺麗に絵付けされていきます。(ここは写真撮影NG…)
絵付けのあとは、『釉薬』を塗っていきます。釉薬は陶磁器の表面にかける薬品のことで、このあとの本焼成を経ることでうつわの表面にガラス質となって固まり、水を弾いたり発色したりします。
この釉薬を塗る工程、非常にデリケートな作業で、大部分はロボットアームによって行われていました。光洋陶器で作る約1万5千種類のうつわ全てで釉薬のかけ方が変わるため、ひとつひとつ動きをプログラムしているそうです。かつては、特定のうつわに釉薬を塗る作業は限られた人しかできない、ということもあったそうです。
ただ、現在でも特殊な形のものは全て人の手で釉薬を塗っていました。中でもお皿の上面にだけ撥水剤という薬品を塗る作業は、見ていて実に気持ちの良い工程。回転するろくろの中心ぴったりにお皿を置き、ハケでスルスルと薬剤を塗っていく様子は、いつまででも見ていられるような美しい所作で、動画でお届けできないのがもどかしいです…!
釉薬が塗られたうつわは、『さや』というセイロのような容器に入れられ、段々に詰まれた状態で、今度は『本焼成』の窯へ進みます。
最後の工程である本焼成、光洋陶器では2種類の焼成方法を取り入れています。
ひとつは『酸化焼成』という手法。窯の中に酸素を取り入れながら焼いていく方法で、窯の中の温度は約1,250℃。釉薬と酸素が化学反応を起こすことで、色鮮やかな陶磁器を作ることができます。
もうひとつは『還元焼成』という手法。今度は逆に窯の中からどんどん酸素を抜き、窒息状態のような形を作りながら焼き進めます。中の温度は約1320度とかなりの高温で、白いうつわや強度が高いものを作るのに適しています。
さまざまなカラーバリエーションがあるORIGAMIドリッパーですが、実はより高温で焼き固められた白いものだけ、比べると少し小さいのだとか。これは知りませんでしたね。
こうして出来上がった陶磁器たちは、最後も人の目で検品され、出荷されていきます。この工場では1日あたり1万個もの商品を製造しているそうです。さすが、この地域だけで日本中の陶磁器を作っているだけのことはありますね!
温もりを感じるドリッパー
実際にORIGAMIドリッパーや他のうつわを作っている工場見学をさせていただいて驚いたのは、意外なほど人の手で作業する工程が多いということ。緻密な工程も多く、もちろん大部分はオートメーション化が進んでいましたが、複雑な造形部分の加工や釉薬を塗る作業など、要所要所はすべて手作業で行われていました。
特にドリッパーは、ほんの少しの造形のズレでも抽出が変わってしまうという、とてもデリケートなもの。世界中で愛されているORIGAMIドリッパーは、最新の機械と職人さんたちの熟練の技で生み出されているんですね。
これまでORIGAMIドリッパーを取り扱ってきたなかで、なんとなく感じていた独特の温かみのようなものの正体が、今回の訪問を経て分かったような気がします。個人的にもより思い入れのあるドリッパーになりました。
コーヒー抽出の調整もバッチリです!
今回の訪問では、KOYO BASEで提供されるコーヒーの抽出調整も、もちろんばっちり決めさせていただいております。
フィルターコーヒーは自動でお湯を注ぐ全自動のドリップマシン『POURSTEADY』での抽出。THE COFFEESHOPのラインナップの中から、浅煎りでフルーティなコーヒーを選んでいます。2月上旬現在のコーヒーは『Kenya / Nyeri Hill』。ピンクグレープフルーツのような瑞々しさと蜂蜜のような甘さが長く続く、明るいコーヒーです。
エスプレッソに使用しているのは深煎りのブレンド。名前は、本焼成時の釜の温度から『ブレンド1300』といいます。ダークチョコレートやローストアーモンドを思わせるしっかりしたコーヒー感の中に、ほのかにシトラスのような果実味も感じるバランスです。
このコーヒーで抽出したエスプレッソは、『濃厚エスプレッソティラミス』で使用しています。KOYO BASEでも人気のデザートで、自家製のティラミスクリームとの相性は抜群です。
ドリンクはもちろん、コーヒー豆でも販売しております。お気に入りのうつわやドリッパーと一緒に、ぜひご自宅に迎えてあげてください。
KOYO BASEのみなさん、ありがとうございました!
訪問させていただいた2日間の間、工場見学やレシピ調整のほか、マグカップの絵付け体験や地元の方への抽出セミナーも行わせていただきました。
抽出セミナーには、KOYO BASEのスタッフの方も大勢参加していただきました。みなさんコーヒーについてより深く学び、美味しいコーヒーを提供したいという気持ちに溢れていて、なんだか嬉しくなりました。
KOYO BASEのスタッフの皆さんは、カフェスタッフもファクトリースタッフも、みんな活き活きとやりがいを持って働いていらっしゃるように感じました。それもまたKOYO BASEの、そしてORIGAMIドリッパーの魅力だと思います。そのことは現地に行ってみないとわからないことで、コーヒーの生産地に初めて行ったときと同じ気持ちになりました。当たり前のことですが、コーヒー器具ひとつ取ってもそれを作り出すために働いている人たちがいて成り立っているんですね。
僕自身、楽しく勉強になる2日間を過ごさせてもらったKOYO BASE。みなさんもぜひ足を運んでみてください!
WRITER
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THE COFFEESHOP
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