スペシャルティコーヒーとは|美味しいコーヒーの秘訣は収穫にあった
前回のvol.1〈コーヒーノキ〉は読んでいただけましたでしょうか?
今回はその続き〈コーヒーの収穫について〉お話しようと思います。
まずは前回のおさらいから
前回はコーヒー豆のもとになる果実を実らせる、植物としてのコーヒー、『コーヒーノキ』についてお話しましたね。覚えておいて欲しいこととして4つのポイントを挙げていましたが、覚えていますか?
そうです、以下の4つでしたね。
1.エチオピア原産
2.熱帯の、標高の高い地域が栽培に適している
3.コーヒーノキの果実に入っている種子がコーヒーになる
4.果実が完熟する時期は、同じ木でもまちまち
だんだんと皆さんがご存知の、お店に並んでいるコーヒーに近づいていきます。収穫の細かい話に入る前に、コーヒーの果実『コーヒーチェリー』と、コーヒーの味がどう関係するか、という話をしようと思います。
コーヒーチェリーの『熟度』はとても重要!
美味しいコーヒーを作るためには、コーヒーチェリーの熟度に注意する必要があります。完熟したコーヒーチェリーから作ったコーヒーには、甘い香りや爽やかな酸味、そして産地によって様々なフレーバーがあらわれてきますが、未熟なコーヒーチェリーから作ったコーヒーには、甘みはなく、ただ酸っぱいだけの酸味で、ものによっては渋味があり、どこか物足りない味のコーヒーができてしまうからです。
手前の緑色の果実はできたばかりの『未熟』
奥に見える、真っ赤な色の果実は熟した『完熟』
その下のオレンジがかった果実は熟しつつある『未完熟』のコーヒーチェリー
このうち、美味しいコーヒーができる可能性があるのはどれでしょう?
もうおわかりですね、『完熟』のコーヒーチェリー“だけ”です。 『未熟』や『未完熟』のコーヒーチェリーは、完熟するまでもう少し時間が必要です。美味しいコーヒーを作るためには、未熟や未完熟のチェリーは完熟するまで取っておきたいチェリーです。コーヒーノキの果実は、実によって完熟する時期が違うので、コーヒーの収穫作業はコーヒーの果実が完熟するタイミングを見ながら、何回かに分けて行われることが多いです。
そして、コーヒーの収穫作業は、ほとんどの国で『手作業』で行われています。一部ブラジルの傾斜が緩やかで広い農園では、機械を使っているところもありますが、それはほとんど例外に近いですね。
コーヒーの美味しさには先見性のある農園経営が必要だった
美味しいコーヒーを作ろうと思うとき、とっても大事なのはこの『完熟チェリー』だけでコーヒーを作ることです。少しでも未熟なものが混ざってしまうと、本来のコーヒーの風味を邪魔してしまうからです。
ですが、これは全然簡単なことではありません。広い広い、たくさんのコーヒーが植えられているコーヒー農園では、収穫作業をするために沢山の人を臨時に雇います。自分の国だけでなく、隣の国まで出稼ぎのようにして働きに行く人もいます。この人たちのお給料は、何によって決められているのでしょうか?
それは、ほとんどの場合『取ってきたコーヒーの重さ』です。重さで決めるなら、完熟だろうと未完熟だろうと未熟だろうと、一気に取ってきてしまえば沢山取ってくることができますし、その分だけお給料を高く受け取ることができますよね。でも、それでは美味しいコーヒーは作れないのです。むしろトータルで見れば損をしている可能性もあります。
なぜなら、未熟や未完熟のコーヒーチェリーは、いってみれば「これから完熟するコーヒーチェリー」です。完熟したコーヒーチェリーなら、美味しいコーヒーが作れて高く売ることができるかもしれないのに、未熟や未完熟のコーヒーチェリーでは美味しいコーヒーが作れないので、値段が高くなりません。美味しいコーヒーを作って高い値段で買ってもらえれば、働いている人たちに高いお給料を払うことができるかもしれないのに、高い値段で買ってもらうことができなくなってしまうと、お給料はずっと変わらないままになってしまいます。
だから、美味しいコーヒーを作りたい農園のオーナーや、農園の管理を任されているマネージャーの人たちは、完熟したコーヒーだけ集めるために、このことを収穫する人たちに教える必要があります。そして、完熟コーヒーチェリーだけを選んで集めてきた人には、未熟なものが沢山混じっているコーヒーチェリーを集めてきた人よりも、高いお給料を払ってやることも必要です。
そんな仕組みを収穫時期の期間限定で働いている人たちの間で作らなければならない、ということは、こうして言葉にするのと比べると尋常じゃなく難しいことです。お金が関わることですしね。ですが、そういった手間をかけて『完熟コーヒーチェリーだけを選んで集めよう』というムードを作ることができると、働いている人たちが持ってきたチェリーが、こんな感じになっている農園も中にはあります。
真っ赤ですねぇ。素晴らしいと思います。
コーヒー栽培は危険と隣り合わせ
コーヒーが栽培されているのは、熱帯地域の標高が高い地域だ、ということは前回もお話しましたが、ものすごく簡単にいうと、要は『山』ということになります。しかもコーヒーはもともと大きな木の木陰で生育する植物なので、栽培環境をそれに近づけるため、コーヒー以外の植物を間に植えたり、場合によってはほとんど原生林に近いような場所でコーヒーを栽培しているところもあります。
うっそうと茂る原生林のような山の斜面での収穫作業…と考えると、いかに困難なことかお分かりいただけるでしょうか。コーヒーノキの枝は横に大きく伸びるので、枝の根本にある実を取るには、相当無理な、不安定な体勢をとらなければならないこともあります。うっかり足を滑らせると、斜面の下まで転げ落ちてしまう危険と隣り合わせです。
全てのコーヒー農園がそうだ、というわけではありませんが、そういった厳しい環境の場所もある、ということは、どうか知っておいて欲しいなぁ、と思います。こういった手がかかる、危険と隣り合わせの農園では、それだけのコストやリスクが、コーヒーの価格に反映されるべきではないかな、と考えます。
まとめ
ちょっとボリュームのある話になってしまいましたが、それでは、今回のまとめです。
1.コーヒーの収穫作業は、結構な重労働
2.何度かに分けて、収穫を行う
3.完熟チェリーだけを集めるのが、トータルでみてとても大事
4.農園によっては、収穫にかかるリスクやコストを考えることが必要
Vol.2の〈コーヒーの収穫について〉、いかがでしたか。次回は生産処理の前編までを見て行きましょう。それでは、次回も楽しみにお待ちください。
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THE COFFEESHOP
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