新進気鋭のインポーター【SYU・HA・RI COFFEE IMPORTERS】に聞く、生豆の輸入業の役割とコーヒー産業の未来。

コーヒー業界の仕事というと、一般的に広く認識されているのは〈ロースター・バリスタ〉など、普段消費者の皆さんと話す機会が多い職種を想像されると思います。
ですが、コーヒー生豆はほとんどが海外生産で日本産の生豆はほとんどが市場に出回りません。
基本的に海外で生産された生豆を輸入する際、個人間でのやりとりは難しいため、商社さんを介して取引を行います。
大手商社さんとの取引が一般的でしたが、最近はより生産国にフィットしたインポーターも続々登場しており、少しずつ消費者の方にも認知が広がっている印象。
そこで今回は、新進気鋭のコーヒーインポーター:SYU・HA・RI COFFEE IMPORTERSの代表 辻本さんと福島さんにお越しいただき、お話しを伺いました!
インポーターとしての心構えや、生産地と消費国の違い、今後の展望などを2週にわたってお届けします。
こちらのインタビューは動画でも公開中ですので、ぜひ合わせてご確認ください!
SYU・HA・RI COFFEE IMPORTERS

To connect producers with roasters
SYU・HA・RIでは、今まで出会ってきた信頼できる『生産者』にフォーカスを当てています。
コーヒー生豆には、それぞれの作り手の想いが込められており、たくさんのこだわりと努力の結晶の塊です。ストーリーを持った生豆を日本のロースターへ届け、生産者とロースターをつなげていくことが私たちの使命です。
ーSYU・HA・RI公式サイトより引用ー
コーヒーインポーター(生豆輸入業)の業務とは?
萩原:今日はお時間いただきありがとうございます!
まずはお二人の主な業務内容を伺えますでしょうか?
辻本さん:中南米を中心に生豆の輸入を行うSYU・HA・RI COFFEE IMPORTERSの代表を務めています。
買い付けるオリジンの決定や現地パートナーとのミーティング、産地訪問などで価格交渉も行い、日本に輸入されるまでの管理が主な仕事です。
福島さん:辻本さんに帯同しての産地訪問やオファーサンプルの確認、輸入課程のチェックやお客様の対応を担当しています。
自身の店舗も構えているので、ロースターとバリスタとしての業務と並行しながらインポーターを務めています。
萩原:インポーターのメンバーに現役のロースターがいるのは珍しい環境ですね。
何かそのことによってインポーターの業務に活かされる点があったら教えてください。
福島さん:サンプルローストの段階でプロダクトローストにした場合の想定が行える点は大きな利点だと思います。
実際に焙煎されるロースターさんのイメージも湧くことで買付には大いに役立ちますね。

コーヒーの産地・中南米へのこだわり SYU・HA・RI COFFEE IMPORTERSの理念
萩原:主に中南米の取扱いが中心ですが、その理由はどこからきているのでしょうか。
辻本さん:現地に住んでいたので、生産者とのコネクションがあることが大きいです。
スペイン語で会話もできますし、コミュニケーションの壁が少なかったため、まずは中南米から始めてみようと思いました。
萩原:輸入業者の方にとって現地との繋がりは大事だとよく聞きます。
では実際に取扱う豆を選定する時にはどのような基準で決定していかれますか?
辻本さん:運搬で使うコンテナ内をどのような種類の豆で組み立てるのか考えています。
1コンテナあたり24t積めるのですが、生産地ごとに生豆のキャラクターも違います。
例えばホンジュラスの場合、とてもきれいな味わいのマイクロロットが多いため、ボリュームロットの買付けは行わずに組み立てます。
グアテマラやブラジルは生産者が所有している農地も広大なところが多いため、ある程度のボリュームロットとマイクロロットを組み合わせて輸入することが多いです。
農園の特性を踏まえて、しっかりと産地の特徴を表せるように買付け行うことを大事にしています。
※マイクロロットとは:ユニークな風味があって一定以上のスコアがつくもの
※ボリュームロットとは:ある程度の品質は保ち価格が抑えられて量が確保できるもの

萩原:買付を行っているコロンビアには独創的な生産者の方が多いと聞きましたが、実際どうでしょうか?
辻本さん:比較的ウォッシュド製法(水洗式)に今力を入れている生産者の方が多いです。
消費者マーケットは特殊精製などのやや派手目なコーヒーを好む傾向が強いと思うのですが、そことは相反する感じですね。
インポーターとして生豆を扱う上で、生産者の理念に共感できることはとても大事だと思っているので、SYU・HA・RIとして輸入するコロンビアの生豆はウォッシュド製法のみになります。
萩原:言ってしまえば少し地味なコーヒーが多いウォッシュド製法の豆ですが、そこに限った場合でも買付のポイントを伺いたいです。
辻本さん:地味だからこそ、生産地のテロワールがきちんと表現されているのもを買付ています。
あとは毎日飲めるコーヒーかどうかも大事です。
毎年生産者の方は様々な努力をしてコーヒーを生産しているので、セレクトショップのように様々な種類のコーヒー豆を買付・販売することもインポーターとして大事だとは思いますが、選択肢の幅が多くある昨今の市場では、SYU・HA・RIがいいと思ったものを買っていただくことにも意味があると思っています。
萩原:確かにインポーター側から提示する選択肢がはっきりしていると、消費者の方にもわかりやすいですね。
福島さんは何か違った基準などお持ちですか?
福島さん:辻本さんがおっしゃた内容を根底に持ちつつ、飲みごごちのよさ、味だけではない楽しみを提供できるかを重要視しています。
自身のお店でも同じ生産者さんのロット違いなどをお客様へ提供しているので、消費者の方に産地をより身近に感じていただけたらという思いがありますね。
インポーターならではの視点でコーヒーを農作物として、また別の角度から楽しみ方を伝えられるような豆を買付けたいと思っています。
生豆の販売 ロースターへの提案時に大事にしていることとは
萩原:一緒にブラジルを訪問した際、産地で豆をみるとそれに合ったロースターの顔が浮かぶとおっしゃっていたのが印象的でした。
SYU・HA・RIさんからの生豆の提案は、お店のコンセプトに合ったものが多いと感じる理由でもあると思うのですが、その感覚についてお伺いしたいです。
辻本さん:お店にお邪魔してお話しを伺う中で、ロースターとしての個性や大事にしている点がわかってくることが多いので、それを踏まえた上で生豆の提案をしています。
例えばブラジルのコーヒーとひとくくりに言っても、クラシックなナッティやチョコレートといったフレーバーのものから、新しい製法を取り入れたフルーティーなものまで揃っているので、自分が買付けた中からお店の個性と需要に合わせた提案ができるよう、意識している感じですね。
コーヒーは人が飲むものですし、コミュニケーションの中からしか生まれない信頼もあるので、人と人との繋がりは大事にしています。
インポーターとしてのやりがいと苦労は
萩原:ここまでインポーターとしての業務内容やこだわりを伺ってきましたが、インポーターとしてのやりがいや、大変だと感じることなどを教えてください。
辻本さん:日本各地でSYU・HA・RIが買い付けた豆を飲める時に嬉しさを感じます。
やはり自分は買付けた豆を美味しいと言って飲んでいただくのはやりがいを感じる瞬間ですね。
ロースターと消費者の方、生産者のどちらからも直接感想を聞けたり、喜んでもらえたりするのはインポーターならではの醍醐味だと思います。
萩原:最近は消費者の方も、どのインポーターからのコーヒー豆なのか気にされる質問される場面が増えてきました。
トレーサビリティの意識が向上しているいい傾向だと思うのですが、インポーターとしてはいかがですか?
辻本さん:コーヒーの農作物としての面白さが広がるイメージなので大歓迎です。
仕入れ価格が調べ方次第でわかってしまうので、昔は取引先を隠すようなことが多かったと思うのですが、スペシャルティコーヒーを楽しむといった観点ではむしろ必要な情報だとも思います。

萩原:ではここが難しい!といった部分を教えてください。
辻本さん:萩原さんにブラジルで見ていただいた通り、難しいことばかりです!
生産者の方から提示された価格に交渉することは多々ありますし、クオリティに見合った価格になるよう調整することはとても大変ですね。
萩原: 日本到着後に生豆の状態に納得がいかず、欠点が多い豆を国内で自腹で選別し直したと聞きました。
辻本さん:そうですね。
入港後に確認した時、どうしてもこのままロースターのみなさんに届けるのが嫌だったんです。
手間も費用もかかりましたが必要経費だと思っていますし、本来出航前に現地で気が付くべきだったと反省点にもなりました。
来年はそのチェックと管理体制もより整えていこうと思っています。
コモディティコーヒーとの関係について 今後のコーヒー市場に関する話
萩原:日本では物価上昇が著しいですが、スペシャルティコーヒーのインポーターとして日々輸入に携わる中、コモディティ市場に関してどう考えていらっしゃいますか?
※コモディティ市場(Cマーケット)とは:
豆の味に対して価格を決定するスペシャルティコーヒーとは違い、コモディティコーヒーは先物取引価格で価格が決定します。
円安や円高などの影響を受けやすい輸入業において、価格の変動が著しくスペシャルティコーヒーよりも安価になりやすいことから、市場観察は非常に重要になります。

辻本さん:円安の影響は相当受けていますが、経済は常に回っていて、悪い時もあればいい時もあります。
今は苦しい状況が続いていますが、今後必ずいい時がくると思っています。
また、コーヒーはやはり農作物なので生産がうまくいかないこともあります。
実際にブラジルでは天候不良などが続き生産量が落ち込んだことから、Cマーケットの価格は高騰し続けていますが、高いと買い手がみつからないのも事実なので、生産者も困っている方が多いです。
柔軟性を持って対応方法を考えていくことが、今後のコーヒー業界の課題になると思っているので、SYU・HA・RIとして対応できることは取り組んでいきたいですね。
THE COFFEESHOP OFFICIAL YouTube Channel でもインタビュー動画を公開中!
今回はインポーターのSYU・HA・RI:辻本さん・福島さんにお話しを伺いました。
こちらの内容は動画でも公開中!
お二人の人柄もより感じていただけますので、ぜひ合わせてご確認ください!
次回は視聴者のみなさんから集まった、コーヒー業界への質問へお二人と一緒に回答していこうと思います!
WRITER
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Mayuka Jimbo
THE COFFEESHOPのMAGAZINEコンテンツ、オンライン担当。
スペシャルティコーヒーの知識だけでなく、レシピの改善や、抽出技術の向上にも日々取り組んでいる。
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