ロースター萩原 ホンジュラス訪問記録|コーヒーを”選ぶ”時代から”選ばれる”時代へ 〜 ホンジュラスで見えたスペシャルティコーヒーの未来

2026.08.14
SHARE

3月26日(木)〜4月2日(木)まで、ロースターの萩原がホンジュラスへ産地訪問へ!

マガジンでは訪問の記録として、お邪魔したエクスポーターや農園をご紹介します。

今回はホンジュラス訪問でロースター萩原が感じたこと、今後の課題やコーヒー産業に携わる者として改めて考えさせられたことなどをまとめています。

ぜひ最後までご覧ください!

ホンジュラスで気づいた、本当に良いコーヒーとロースターの関係

ロースターの仕事は、「美味しいコーヒーを選ぶこと」だと思われることが多いかもしれません。

実際、日本でロースターをしていると、コーヒー豆を輸入する商社やインポーターが現地で買い付けたサンプルをカッピングし、その中から取り扱いたいロットを選んで仕入れる、という流れが一般的です。カッピングテーブルには数十種類ものサンプルが並び、その中から味わいと価格のバランスを見ながら商品を決めていく。日本のロースターの多くが、このような方法でコーヒーを仕入れているのではないでしょうか。

もちろん、それが悪いという話ではありません。

日本は主要なコーヒー産地と距離があり、小規模なロースターも多いため、毎年産地へ足を運ぶことは簡単ではないと思います。ましてや生産者と直接取引を行うとなると、かなりの時間やコストが必要になります。だからこそ、商社やインポーターが現地で選定したコーヒーを購入する現在の流通は、日本のスペシャルティコーヒー業界にとって非常に重要な仕組みだと思っています。

しかし、その環境に慣れてしまうと、いつの間にかロースターの仕事が「並んでいるコーヒー豆の中から選ぶこと」だけになってしまう危うさも感じています。

もちろん、それでもお店は成り立ちます。

美味しいコーヒーを選び、お客様へ届けることは十分価値のある仕事です。

それでも私は、この先何年、何十年と美味しいコーヒーを届け続けていくことを考えたとき、このスタイルだけでは立ち行かなくなるのではないかという漠然とした不安を抱いていました。

ホンジュラスで実感した「本当に良いコーヒーは待っていても手に入らない」ということ

今回ホンジュラスを訪れて、その考えは確信へと変わりました。

現地で改めて感じたのは、

「本当に良いコーヒーは、待っているだけでは手に入らない。」

ということです。

訪問したSan Vicenteでは、そのことを何度も実感する場面がありました。生産者とロースターの関係は、結局のところ"人と人"の付き合いです。長年産地へ足を運び、お互いを知り、信頼関係を積み重ねていくことで初めて、本当の意味での取引が始まるのだと思います。

帯同させていただいたSYU・HA・RIも、最初から特別なロットを紹介されていたわけではありません。初年度にオファーされていたのは、Parainemaを中心とした発酵系のロットがほとんどだったそうです。

しかし、その後毎年San Vicenteを訪れ継続して買い付けを行い、生産者との関係を築き続けてきたことで、新しい生産者やロットを紹介してもらえるようになりました。今年のオファーリストには、Angelが新しく手掛けた栽培エリアのGeishaも並んでいました。

そのリストを見たSYU・HA・RIのメンバーが、

「ついにAngelのGeishaをオファーしてくれるまでになった!」

と感動していた姿が、とても印象に残っています。

それは単純に希少なGeishaを紹介されたという話ではありません。何年も通い続け、信頼を積み重ねてきたからこそ得られた、生産者からの"選ばれた証"だったのだと思います。

本当に良いコーヒーは、毎年通い続け、買い続け、関係を築いた人のもとへ届く。そして、そうした背景を持つコーヒーだからこそ、本当の意味で価値のある一杯になるのだと感じました。

これからのスペシャルティコーヒーに必要なのは、「選ぶ力」だけではない

現在、コーヒー産地では様々な課題が起きています。

どの生産国でも共通して聞かれるのが、異常気象による収穫量の減少です。中米では慢性的な人手不足も深刻化しており、生産体制そのものが変化し始めています。コーヒーはもともと自然条件によって収穫量が毎年変動する農作物ですが、こうした状況が続けば、世界全体で生産量は徐々に減少していく可能性も考えられます。

もう一つ無視できないのが、コーヒー消費新興国の急速な拡大です。

実際今回の訪問でも、特に中国向け輸出について多くの話を耳にしました。

例えば多くのロースターにとって重要な生産国であるエチオピアは中国との経済的な結び付きが特に強く、中国向け輸出には税制面での優位性もあることから、多くの高品質なコーヒーが中国市場へ流れているそうです。

今後、世界中で良いコーヒーの奪い合いが、さらに加速していく可能性があると思います。

そんな時代に、品質の高いコーヒーを安定して扱い続けるためには、ただカッピングテーブルでサンプルを待っているだけでは難しくなっていくでしょう。実際に産地へ足を運び、生産者と顔を合わせ、継続して買い付けを行い、飲んだ感想や販売後のフィードバックを返していく。その積み重ねが、生産者との信頼を育み、次の収穫、その次の収穫へとつながっていく。

ロースターに求められる役割も、これから少しずつ変わっていくのではないでしょうか。

コーヒーを選ぶのではなく、「選ばれるロースター」でありたい

今回のホンジュラス訪問は、結果的に美味しいコーヒーを探すだけの旅ではありませんでした。

むしろ、自分たちがこれからどんなロースターでありたいのかを考え直す、大きなきっかけになったように思います。コーヒーを選ぶだけではなく、生産者からも「このロースターに届けたい」と思ってもらえる存在になること。それこそが、本当に良いコーヒーを取り扱い続けるために必要なことなのだと感じました。

THE COFFEESHOPとして、これからも産地へ足を運び、生産者との関係を大切にしながら、美味しいコーヒーを届け続けていきたいと思います。そのためには、もっとたくさんの生豆を買い付けできるようになって、生産者にインパクトを与えられるようになる必要もあると感じています。できるだけ真摯なやり方で事業を拡大していくこと。それもまた、持続的なコーヒービジネスのためには重要なことだと考えています。

最後になりますが、今回のホンジュラス訪問で多くの学びと出会いを与えてくださったSan Vicenteチーム、SHU・HA・RIチームに、心より感謝申し上げます。

また必ずこの場所へ戻ってきたいと思います。そして、その時にはロースターとしても、今よりさらに成長した姿で皆さんにお会いできるよう努力を続けて参ります。

本当にありがとうございました!

WRITER

Daito Hagiwara

THE COFFEESHOPロースター

THE COFFEESHOPにて取り扱うすべてのコーヒー豆の仕入れと焙煎・クオリティコントロールを担当。日々焙煎の研究とコーヒー豆の品質チェックを行う。2024年 Next up Roasting Championship優勝。2025年 焙煎競技会 ROAR OF THE ROAST 2025 優勝

毎週木曜日20:00〜Instagram、YouTube、Xスペースでライブ配信中!

PICK UP ITEM

関連記事