ロースター萩原 ホンジュラス訪問記録| Part.2 農園ツアーLas Flores編

2026.05.19
SHARE

3月26日(木)〜4月2日(木)まで、ロースターの萩原がホンジュラスへ産地訪問へ!

マガジンでは訪問の記録として、お邪魔したエクスポーターや農園をご紹介します。

すでに今年2回目の生産地訪問。

どんな内容だったのか、何編かに分けてお届けいたしますので、ぜひ最後までご覧ください!

ついにSanta Barbaraの生産者のところへ

まずは朝ごはん

2026年3月27日

SanVicenteのオフィスから程近いカフェ、El Doradoで朝食。ここはBenjaminが経営するお店で、2階にはピザ屋と焙煎機。かなりモダンでおしゃれなカフェで、生産者の出入りも多くあります。

コーヒービジネスの目線でいうと、輸出業者としてカフェを持っていることは重要で、国外輸出に回せなかった豆をカフェに使ったり焼き豆としても販売できます。ここ以外にも大きな焙煎設備もあるようで、買い付けたコーヒー豆を無駄なく消費できるとのこと。

朝食に選んだのはモーニングプレート的なメニュー、Typico。

たまご、チーズ、揚げバナナ、豆のペースト、ハム、アボカドをトルティーヤで包んで食べます。美味しい。これを書いている今もまた食べたくなってきました。

他の人が頼んでいたオムレツも美味しそうでフードのレベルがとても高かったです。

  • モーニングプレート的メニュー、Typico

  • トルティーヤで具材を包んで食べる

  • オムレツも美味しそう!

  • モダンなEl Doradoの店内

  • コーヒーはエスプレッソメニューが中心

この日はSanta Barbaraのいくつかの小規模農園を回るツアー形式でホンジュラスを巡りました。今日はLas Floresというエリアを巡ります。

SanVicenteのオフィスから近くの農園エリアまでは車で30〜1時間程度と近いのが特徴。ただ、途中から完全オフロードになっていきます。

車窓に映る辺りの山には霧がかかっていて、実にSanta Barbaraらしい景色。近くにある大きな湖から立ち上る水蒸気がこの霧を作り、独自の気候条件を生み出しています。

  • Pena Blancaの町を出るときには雨が降っていました

  • Santa Barbara名物・霧のかかった光景

Santa Barbaraの生きるレジェンド|Juan Evangelista Fernandez

最初に訪れたのはJuan Evangelista Fernandezという生産者です。実は去年TCSでParainema Washedを買っている方で、お会いするのを楽しみにしていました。(まだ焼いてはいない…)

農園の名前はFinca La Mararia。標高は1,400mくらい。

この日一緒に農園を回るSanVicenteの品質責任者Angelが「日本でLa Marariaのコーヒーを買ってくれたロースターだ」と紹介してくれると、めちゃくちゃ熱烈歓迎してくれました。じっと目を見て手を握りながら語りかけてくれ、とても熱意が伝わる方でした。

握手するとびっくりするくらい手が大きい!農家の手!という感じでした。

年齢を聞くとなんと88歳!コーヒー生産して50年!元気すぎる。

Santa Barbaraではじめて二段式の乾燥棚を作った人らしく、実はレジェンドだったらしい。

  • Finca La Mararia

  • 右の方がJuan氏。真ん中に立っているのは息子さん。

  • Santa Barbaraではじめて二段式の乾燥棚を作ったレジェンド

  • 美しいパーチメント

  • 88歳とは思えない熱意のこもった説明をしてくれる

  • フォトジェニックな犬

この農園ではGeishaを植え始めて3年目、今年はじめての収穫を迎えたらしいく、”是非ダイトにサンプルを試して欲しい”と熱烈に言っていただきました。乾燥が終わり袋詰めされたものから、目の前でサンプルをもらったので、後日カッピングテーブルに並ぶ予定です。

農園ではほぼ収穫は終わっており、この日はラストピッキングを行なっていました。少量のみ木に残ったチェリーを取り切る日にあたります。樹上にチェリーを残っていると過完熟し落ちて腐るため、管理上あまり良くないそう。熟度は関係なく、なっているチェリーは全て取ります。Parainemaの特徴らしく、コーヒーの木はとても樹高が高い印象でした。

  • 乾燥まで終えたパーチメント

  • 袋から直接サンプルをとる

  • チェリーが植っているエリアへ

  • この日はラストピッキングの日

  • Parainemaは樹高が高い

収穫が終わると、ピッカーさんたちが集めたチェリーを集積して重さを記録します。ラストピッキングの日なのでチェリーの色はかなりまばら。小屋の中でハンドソーティングをしていきます。

チェリーを集めた小屋から、一段下の小屋にチェリーが落ちるようになっていて、そこにあるパルパーで脱穀→プールでドライファーメンテーションの工程に移ります。

そこからさらに一段下に下ろし、また別のプールで水洗いをし、横にある屋根付きアフリカンベットで乾燥させる。という手の込んだ精製方法でした。

上から順にプロセスを進めることから、山の斜面という地形を生かしたウェットミルの設計になっています。

  • チェリーの重さを軽量

  • 集められたチェリー

  • 小屋の中でハンドソーティング

  • 一段下の小屋でパルピング

  • さらに下に位置する発酵槽

農園の上の方の区画では、元々植っていた食用フルーツの木を切って、新しくコーヒー用の農地を準備中。

肥料はオーガニックとケミカルと交互に撒いています。肥料についてはSanVicenteも土を調査して適切な量を指導しているとのこと。あげすぎないように調整することがポイントだそうです。

シェードツリーにはバナナ・アボカドなど、いろんな種類のシェードがあり、それが土壌に良い影響を及ぼすとのこと。広く根を張り土壌流出を防ぐレモングラスなども植っていました。

  • 生い茂った木々の合間にコーヒーの木

  • かなり急な斜面に沿って農園が続く

  • 気づけば霧に覆われている

  • 多様な植物が植えられた環境がコーヒーに良い影響を及ぼす

  • Juan氏の孫。小学校に通いながら農園も手伝っている

Juanさんと記念撮影。

生産者にとっては、継続してコーヒーを買ってくれるロースターと繋がることがとても重要で、安定した生活を望んでいることがよく伝わりました。SanVicenteはそうした小規模生産者にフォーカスして、ロースターやバイヤーと繋げることを大切にしているのだと、改めて実感したシーンです。

産地に行くことでひとつのコーヒーが作られている場所を見て、人と会って話をし、関係性を築いて取引を続けていくことの大切さにより気づくことができと思います。

Juanさんにゴリ押しされた初収穫のGeishaも、正直大体初年度はクオリティがめちゃくちゃ高くはならないそうで、それでも継続して訪れて繋がっていくことで品質向上を実感できたりしたら素敵だなと思っています。

(まだカップをとってないので何とも言えないところですが…)

  • みんなで記念撮影

  • SanVicenteは1人1人の生産者と深い信頼関係を結んでいる

  • 農園内をずっとついてきてくれた

Santa Barbaraの未来を担う若き生産者|Denilson Madrid

次に訪問したのはDenilson Madrid。

Santa  Barbaraで有名な生産者であるFranklin Madridを父に持ち、まだ20代ですが自身の農地をもってコーヒー生産に取り組んでいます。

実は去年のSCAJぶりの再会。会って話したことを覚えていてくれていました。(まだ彼のコーヒーは買えていないけど…。)

Santa  Barbaraには彼の他にもMadrid一族がたくさんコーヒー農家を営んでいて、親戚同士で助け合ってコーヒーを作っているそう。英語が堪能で育ちの良さを感じました。

農園についてまず目の前にあったのは乾燥棚。ここではCatuai Washedの乾燥の真っ最中でした。

乾燥に15日〜20日かけるスロードライを採用しているそうで、それによって生豆の品質が長持ちするとのこと。

小さいけれどウェットミルも農園に併設されていて、収穫したチェリーを一晩袋に詰めて予備発酵、フローター除去、パルピング、24時間水につけてから洗うまでの工程も農園で担っているそうです。

この日はお父様の指導を受けてAnaerobicを作っているとこで、発酵させたパーチメントはWashedと比べて黄色•茶色に色づいて見えました。このAnaerobicは主に未成熟のチェリーに対して行われるそうで、そのままだとコマーシャルに回されるものを発光の力でクオリティを引き上げ、より価値をつけて販売できるように工夫しているとのこと。

  • 若手のホープ、Denilson

  • Catuai Washedの乾燥中

  • 農園併設のウェットミル設備

  • なぜAnaerobicをするのかを説明してくれた

  • Anaerobicは通常に比べてパーチメントが茶色く色づく

農園には常に霧がかかっていて、とても涼しい気候でした。この霧はSanVicenteの東部にある大きい湖から出る雲。この霧のおかげで基本的にシェードツリーも必要ないけれど、ここ2〜3年で気候が変わってきていて、そろそろ必要になってきてると感じてるそうです。

涼しさのためチェリーの成熟が遅く、ここではまだ枝に緑色のチェリーが残っていました。先ほどのJuan Evangelisaの農園から200mほど登っただけで収穫期が全然違うのが興味深い…

チェリーは同じ木でも熟す順番がまちまちで、全部で6〜8回くらいに分けて収穫を進めていきます。そのため、収穫期が3ヶ月くらいかなり長く続きます。

木の間を見ると、ペットボトルで作った謎の装置が。チェリーを食べる虫害を防ぐためのトラップで、これも気候変動に伴う環境の変化により必要になってきたのだそう。

  • 常に霧がかった農園の風景

  • 枝にはまだたくさん緑のチェリーが残っている

  • Denilsonはなんだか絵になる男

  • チェリーを虫害から守るトラップ

  • お腹空いてる?とフルーツを用意してくれました!

    パパイヤとマンゴーとメロン。日本で食べるフルーツよりも良い意味で完熟していなくて、酸味があって美味しい!

農園の木は、先に行った農園と比べてみんな背が低い印象。

収量が落ちた枝を落とすことで、生きた木を作るというのが育成する上でとても大切だそうで、カットバックしてことはきちんと手入れされている証拠になるようでした。

また、常に霧がかかっていて木に苔が生えているので、これを取り除いてやらないと、新しい枝が伸びないとのこと。農地は4.5haあり、かなり手入れが大変そう…。

また、自然森も3haほど残してあり、SanVicenteでは森を守る・再生させるプロジェクトも並行して進めていると教えてくれました。

植えている品種はPacas、Parainema、Catuai、 Bourbon、PinkBourbon、Geisha。中でもCatuaiが1番多く、この土地にフィットしているそう。

逆にParainemaと Bourbonは病気がちで、Bourbonを切ってGeishaへの植え替えを進めているようです。

  • 比較的樹高の低い木が並ぶ

  • ここでも急な斜面を登っていく

  • 登った先から見える美しい景色!

  • 霧のせいで木に苔が生える。これを取り除かないと新しい枝が生える邪魔になるので、一本ずつ綺麗にする作業も必要。

  • 農園の上部には自然林が続く

  • さまざまなVarietyを栽培している

  • 新しく植えたGeishaの苗木

農園にはピッカーが7人くらい、広さに対して人数少ないですが、気温が低くチェリー順番に熟すので十分対応できるとのこと。多くのチェリーが一気に熟す場所では、この人数では無理だそうです。

ピッカーさんに払われる給料は、1ボックス=14kgのチェリーで100レンピラ(約600円)、平均して1日に3〜4ボックスが収穫されます。作業は朝7時30分〜14時30分までピック、そのあとハンドソーティングまで担当します。

Denilsonの次の目標は屋根付きの乾燥台で、それがあればよりスロードライで品質が上げられるとのこと。ただ環境を整えるのには300万くらいかかるそうで、そこに向けて地道に取り組んでいくと語ってくれました。

農園を見せてもらったあとは、近くにあるDenilsonの親族の家でランチをご馳走に。この家ではペットとしてシカを10頭くらい飼っていて、エサにとうもろこしをあげるのをみんなで眺める時間が8分ほど。

  • 農園を歩きながらたくさん話をした

  • Denilsonの農園をあとに

  • Madrid一族のお宅でランチ!

  • Santa Barbaraの家庭料理をいただく

  • Denilsonがペットの鹿にエサをあげるのを見守る時間

ランチを食べていたらDenilsonの親戚たちMadridファミリーが続々と集結。

みんな叔父や従兄弟など、有名生産者であるDenilsonのお父さんを中心にそれぞれが農地を持っていて、助け合いながらコーヒー生産を営んでいました。

近くにあるMadridファミリーのひとり、Carlos Madridの乾燥台へもお邪魔することに。彼のコーヒーは何年か前にTCSで買わせてもらったこともあります。しっかりと大きい屋根付きの乾燥台が目立ちます。

続いて苗木を育てるスペースを見学。

普通の苗木袋よりも縦に長く作られていて、根を下に伸ばすことで農園に植えたときにより定着するようになるそうです。通常3〜4ヶ月で育てる苗木も、ここでは1年くらいかけて育てているとのこと。早く農園に植えてしまうより、水やりも楽でコントロールしやすくなるんだとか。

最近ではコロンビアから持ってきたピンクブルボンやチロソに力を入れているようで、他の品種に比べてカップクオリティも育てやすさもあるようでした。逆にパカス減ってるのが少し寂しい気もする。

  • 充実した設備のある乾燥棚。Denilsonも自分の棚が欲しい。

  • みんなコーヒー生産者のMadrid一族

  • 右にいるのがCarlos Madrid

  • Carlosの苗床。縦に長い袋で育てている

  • 広々とした敷地に乾燥棚がいくつも並ぶ

続いてはCarlosの農園へ。ここは多様な植物がそのままになっていてより森林のような雰囲気。Denilsonの農園と植生も異なり、より平な場所にありました。

主な品種はGeisha、Pink Bourbon、Maracaturraなど。Parainemaはあまり上手く育たないようです。最近ではもともと植っていたLempipaというCatimor系品種から徐々に植え替えを進めてるとのことで、環境の変化に適応していく努力を感じました。

  • Carlosが農園を案内してくれる

  • 南国っぽい植生。Denilsonの農園ともまた違う雰囲気。

  • Madrid一族はみんな仲良さそう

  • 良い車乗ってる

Carlosの農園を見せてもらったあとは、またすぐ近くにあるウェットミルへ。ここはMadrid一族の長であるFlanklinが今年作った新しくて大きな設備で、一族みんなで使っているそう。ここも霧に覆われていてとても涼しい気候でした。

タンクではチェリー発酵の真っ最中で、低温発酵させたロットを嗅がせてもらいましたが、ピーチぽい香りでかなり良さそうな印象でした。

気づけば夕方遅い時間になり、雨が降り出しました。すぐ横のレストハウスに避難してコーヒーブレイク。Angelはどこに行くにもコーヒーセットを持ち歩いていて、OREA Z1というマニアックなドリッパーでコーヒーを淹れてくれました。

  • 新しく作ったウェットミル

  • 大きなパルパー

  • 袋の中にはパーチメントがぎっしり

  • 低温発酵のロットはピーチの香り

  • 気づけば濃い霧に覆われ、雨が降り出した

  • AngelがOREA Z1でコーヒーを淹れてくれた

次回に続きます!

Pena Blanceへ戻り、朝食を食べたEl Doradoの2階でピザを食べて2日目が終了。この日はTHE COFFEESHOPでも買わせてもらっている生産者さんたちに会うことができて、かなり充実した一日でした!

ホンジュラスの生産者たちは親から農地を分配されてコーヒー栽培を始めている方が多く、そのぶん小規模な生産者が多いですが、SanVicenteと一緒に品質にしっかりフォーカスして取り組むことで収入を得て、新しい設備投資をしたり農地を広くしたりいい循環が生まれている印象もあります。

それでも一部の成功した生産者を除けば生活に余裕があるとは言えないようで、コーヒー生産のみで生きていくには農地1haだと夫婦2人でギリギリ、3haくらいないとちゃんと子育てしていくのは難しいようです。

生産量は1haで1,600kgパーチメントが普通、グリーン(生豆)で1tちょっと、仮に5ドル/poundで売ったとしても売上で年間175万くらい。

ここからSanVicenteの手数料やピッカー人件費などが引かれて手元に残ると考えると、100万とか?なかなか厳しい現実を感じました。

それだけに、生産者たちがロースターと継続した取引を強く望んでいることがよくわかります。明日以降もSanVicenteといろいろな農園を回りますが、本当にお見合いしてるみたいだなと感じました。もちろんコーヒーをカッピングしてクオリティをしっかり見極めることが最重要にはなりますが、継続して繋がりたい生産者と会えたら嬉しいと思いました。

次回はSanVicenteのラボでカッピングした様子などをお届けします!

お楽しみに!

  • Denilsonのところにいたネコピ

  • ピザ!普通に美味しい

  • 山盛りチキンサラダ

WRITER

Daito Hagiwara

THE COFFEESHOPロースター

THE COFFEESHOPにて取り扱うすべてのコーヒー豆の仕入れと焙煎・クオリティコントロールを担当。日々焙煎の研究とコーヒー豆の品質チェックを行う。2024年 Next up Roasting Championship優勝。2025年 焙煎競技会 ROAR OF THE ROAST 2025 優勝

毎週日曜日18:30〜Instagram、YouTube、Xスペースでライブ配信中!

PICK UP ITEM

関連記事