なぜコーヒーといえば ”ブラジル” なのか?意外と知らないその理由を解説。

2025.03.28
SHERE

コーヒー生豆の生産は日本でも一部地域で行われていますが、やはりまだまだ主流は海外生産です。

アフリカ・中南米・アジアなど数多くある生産地の中で、一般的に広く知られている生産国はやはりブラジルではないでしょうか。

国土の大半がコーヒーベルトに位置しており、山脈による標高差、熱帯〜湿帯気候の比較的温暖で雨量が確保できる点など、コーヒー栽培においてかなり有利な土地柄です。

今回は、なぜ日本においてコーヒー生産国=ブラジルといった認識が広まっていったのか。その背景やブラジルのコーヒー豆を使うことによるメリットなどをお話ししたいと思います。

コーヒー豆生産量世界一|全体の1/3を占める大国「ブラジル」

世界一の生豆生産量を誇るブラジル。

19世紀初頭から栽培が始まり、具体的な収穫量は年によって異なりますが、近年のデータによると、年間約3,000万から4,000万袋(1袋は約60kg)程度のコーヒーがブラジル国内で生産されています。

これは、世界全体のコーヒー生産の約30%を占める数字です。

主にアラビカ種とロブスタ種が生産されていますが、割合ではアラビカ種が多いとされ、そのほとんどは高品質な輸出用として栽培されています。

コーヒー生産はブラジルの農業セクターにおいて重要な役割を果たしており、雇用を生み出し地域経済の活性化を担っています。

また、農園は主に家族経営で、代々続く歴史のある農園が多いことも特徴です。

大規模な土地を保有する大型の農園から、小規模に生産を続ける農園まで形態は様々ですが、多くの農園が伝統的な手法と最新の農業技術を組み合わせて、持続可能な生産を目指しています。

  • 敷地は広大ですが斜面や凹凸のある道が多いため、馬で移動することもあるそう。

  • 日が当たり比較的風の通る場所で栽培しています。

コーヒー農業は生産過程で大量の水を使用する場面も多く、処理水が周辺の森林へ与える影響を疑問視する声も多くありました。

そのため、川の水だけではなく雨水を混ぜて保水しておくプールを設置したり、コーヒーの実の残り(カスカラ)を廃棄するのではなく堆肥に再利用するなど、環境への配慮を発信する場面も多く見られます。

この動きに合わせて、ブラジル政府はコーヒー産業を支援するために農業技術の向上や、市場へのアクセスを促進する政策を実施しています。

国民みんながコーヒー好き!内需による生産量の安定化

生産国として世界一のブラジルですが、コーヒーの国内消費も多いことが特徴です。

他の生産国ではコーヒーを日常的に飲む習慣のない場所もありますが、ブラジルでは主にエスプレッソやミルクを加えた甘さのあるコーヒー〈カフェ・コン・レイテ〉が広く好まれているそうです。

また、ブラジルは南アメリカで最も人口が多い国で、2023年の時点では約2億1300万人程度、一般的には1人あたり年間約5kgから6kg程度の豆を消費しているとされています。

日本人の1人当たりの年間コーヒー消費量は約4.5kg。人口もブラジルの方が1億人程度多いため、その消費量がいかに多いかおわかりいただけると思います。

  • World Barista ChampionshipのチャンピオンであるBoram Um氏のご家族、Stefano Um氏がコーヒーを淹れる様子。

    生産者自らコーヒーを振る舞ってくれることも珍しくありません。

  • ブラジルではエスプレッソやカフェ・コン・レイテを食事や軽食とゆっくり楽しむのが主流だそう。

  • アレンジドリンクの種類も豊富です。

また、国土の大半でコーヒー生産が可能なため、収穫量が安定しており、ブラジルの生豆は比較的安価に取引できるコーヒーとしても知られています。

特に先物取引で価格が決定するコモディティコーヒーなどは、一度に大量の豆を輸入する必要がある企業にとっては扱いやすい品物になるため、ブラジルのコーヒー豆を使用する傾向が強いように思います。

そのような理由で、手に取りやすい価格の製品にはブラジル産のコーヒー豆を使用しているケースが多いため、日本において産地としての認知が広まったのだと考えています。

ブラジルのコーヒー 味の特徴は?|日本人には意外な接点も

生産や消費に関する背景をお伝えしたところで、ブラジルのコーヒーの味わいについてお話しします。

代表的なフレーバーとしては、〈チョコレート・ナッツ・キャラメル・シトラス〉などで、数あるコーヒーのカップコメントの中でも馴染みがあるものが多い印象です。

持っているコーヒーの個性を活かすために、比較的中煎り〜深煎りの焙煎で販売されることも多く、その落ち着いた味わいも日本人の好みにあった味に仕上がりやすいのではないかと思います。

またブラジルは日本からの移民も多く、日本の商社や輸入業者とのコネクションを持つ農園の方もいらっしゃいます。

これは推測になってしまいますが、そういった背景も日本にいて〈コーヒー生産国=ブラジル〉といった印象が根強い理由なのではないでしょうか。

Stefano Um氏とロースターの萩原。

ブラジル産地訪問時にお世話になりました。

ブレンドもしやすい|味の基本を作るブラジルのコーヒー

落ち着いた味わいが多い特徴があるため、ブレンド作成時に重宝するコーヒー豆の一つです。

ブレンドの作成は浅煎り〜深煎り、生産処理などを問わず豆を選ぶため、どんな豆とも親和性のあるブラジルのコーヒー豆は味の土台にもなります。

THE COFFEESHOPでは毎月オリジナルのシーズナルブレンドをはじめ、その他のオリジナルブレンドを作成する機会も多いのですが、味に締まりがないと感じる時や、強弱のバランスを整えたいと思った時にブラジルを足すことがあります。

ぴったり味がまとまる豆であること、生豆の価格も抑えられる点でも使いやすい豆であると言えると思います。

淹れる時に失敗しにくい|コーヒー初心者にも安心

ご自宅でコーヒーを淹れる際、レシピや器具の種類を問わず、比較的どなたでも抽出に失敗しないコーヒー豆だと思います。

特に抽出環境を整えることが大変な自宅抽出では、簡単な抽出であっても毎回同じ味わいに淹れることが難しい場合が多いです。

抽出に失敗しにくい理由としては、ブラジルの豆の特性と焙煎度合いが関係しています。

ブラジルは比較的標高の低い産地が多く、生豆の密度が低いため、火が入りやすいという特徴があります。

その点と前述にあるように豆の個性を活かすため、中煎り〜深煎りの焙煎で販売される傾向があり、豆自体が抽出に失敗しにくい特徴を持っているというわけです。

これから初めてコーヒーを淹れてみようと考えている方に、最初の1杯としてご提案しやすい豆が多いので、ぜひ試していただきたいです!

まとめ|ブラジル スペシャルティコーヒーを取り扱うにあたって

ここまでブラジルのコーヒー豆の特徴を踏まえながら、産地=ブラジルといった印象がなぜ多いのかをご紹介してきました。

土地が大きく収穫量も安定しているブラジルですが、アマゾンの森林環境の変化や温暖化の影響を受け、現状のコーヒー豆生産が今後続けられるか不透明な部分も多いそうです。

コーヒーの産地は情勢が不安定な場所も多く、普段私たちが口にしているコーヒーが気軽に飲めなくなってしまうかもしれません。

消費国として飲むだけではなく産地の環境や背景を知ることで、より楽しんだり、コーヒー以外の観点にも親しみを持って考える機会になると思います。

スペシャルティコーヒーの理念の一つは『From Seed to Cup』。

コーヒー豆が収穫される産地から、消費者が飲むコーヒーになるまでの過程において、品質向上と持続可能性を追求しています。

THE COFFEESHOPではなくても、スペシャルティコーヒーを通して産地の奥深さを楽しんでいただけると嬉しいです。

コーヒーチェリーの状態で山状に積み上げ乾燥・発酵させる伝統的な生産処理。

火山のような見た目のためVulcanoと言われています。

WRITER

Mayuka Jimbo

THE COFFEESHOPバリスタ・ストアサブマネージャー。

富ヶ谷のロースタリーROAST WORKSにてドリンクを提供。フードペアリング担当。レシピの改善や、抽出技術の向上に日々取り組んでいる。

毎週日曜8:45〜はInstagramとYouTubeで15分間のライブ配信中!

PICK UP ITEM

関連記事