スペシャルティコーヒーがSDGsに貢献できること

2021.10.07
SHERE

持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)。2030年までに達成すべき共通目標として、今誰もが意識し始めているものと思います。今回の記事では、そのSDGsとスペシャルティコーヒーとの関係性についてお伝えしていきます。

スペシャルティコーヒーとSDGsの関係性とは

SDGsというものは何となく理解できている。人類共通のゴールということもわかっている。しかし、一体何をしたらいいのか。個人として具体的に出来ることは何なのか。この辺りはまだまだ分かりにくいことが多い…。

しかし、実は私たちが普段何気なく選択しているモノやコト、行っている行為の中にも、SDGsに貢献出来ていることはたくさんあります。” スペシャルティコーヒーを楽しむ ” ということも、その一つです。

SDGsとは

「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のこと。国連加盟国の193カ国が2030年までに達成すべき国際目標。

17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。

SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます。

外務省HPより

スペシャルティコーヒーがスペシャルティコーヒーと呼ばれるための条件は、大きく以下の3つです。

・品質が優れていること

・トレーサビリティがとれること

・サステナビリティがあること

この3つの条件を満たすよう作られるスペシャルティコーヒー。特別美味しいコーヒーであることと同時に、SDGsとも密接に関わっています。今回は17のゴールのうち特に関りが深い4つについて、お伝えしていきます。

SDGs【ゴール1:貧困をなくそう】とスペシャルティコーヒー

まずはSDGsの1つ目のゴールに掲げられている【貧困をなくそう】ということ。『あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる』というものです。このゴールとスペシャルティコーヒー、一体どのような関係があるのでしょうか。

コーヒー農園を貧困に陥れる 国際市場の価格変動

コーヒーという作物は、そのほとんどが発展途上国・発展中進国とされる地域で生産されています。過去には貧困状態にあるコーヒー農家に密着、コーヒー産業の問題点を露わにしたドキュメンタリー映画も話題になるなど、ご存じの方も多いかもしれませんね。

世界最貧国のひとつに数えられるエチオピアの農園

コーヒー農家が貧困に陥る原因はいくつかあげられます。

一つは、一般的に流通するコーヒー(コモディティコーヒー)の国際市場価格の変動です。

年度別コモディティコーヒー価格の推移(出典:世界経済のネタ帳)

コモディティコーヒーの価格は、NY・ロンドン株式市場での先物取引によって変動します。例えば、世界的な金融危機や、昨今の新型コロナウイルスの流行など、世界情勢によってコーヒーの取引価格は大きく左右されます。

コモディティコーヒーとして流通した場合には、どれだけ品質の高いコーヒーを生産したとしても、安く買い叩かれてしまうこともあります。結果、栽培努力に見合った賃金が得られないということに繋がってしまうのです。

努力と成果を正当に評価するスペシャルティコーヒー

一方で、私たちの取り扱っているスペシャルティコーヒーでは、基本的にコーヒーの品質によって取引価格が決まります。生産するコーヒーの品質が高くなるほど、農園の敷地面積あたりの収入も増え、経済的に豊かになるのです。

カッピングによって品質のチェック・保証が行われる

ある調査では、世界のコーヒー豆の半分以上が、作付け面積にして5ヘクタールに満たない小農家によって栽培されているというデータがあります。

農園規模の小ささはそのまま収入の少なさに直結しますが、そこで品質の高いスペシャルティコーヒーを生産することができれば、十分な収入を得ることも可能です。

メキシコで小さな農園を家族で営むアルタミラノ氏

また、忘れてはならないのは、トップ・オブ・トップクオリティのコーヒーだけに注目すべきではない、ということ。

例えば、生産国ごとに行われるCOE(Cup of Excellence)という品評会では、入賞を果たすことができれば、大きな報酬と名誉を得ることができます。しかし、高く評価されるものはコーヒー全体の流通量からするとほんの一握りです。

スペシャルティコーヒー生産に取り組む農園においても、トップ・オブ・トップとまではいかないものの、スペシャルティの要件を満たし、コモディティコーヒーとして売るにしては品質が高い、というコーヒーが大部分を占めます。

そうしたコーヒーを継続的に買い付けることは、安定的な生産者の収入に直結するのです。

焙煎やブレンドの技術によって最終的なカップクオリティを底上げし、お客様に提供することは、私たちのようなロースターの大切な使命だと思っています。

THE COFFEESHOPがシングルオリジンだけにこだわらず、ミックスオリジン(ブレンドコーヒー)に力を入れているのには、そうした意味合いもあるのです。

SDGs【ゴール10:人や国の不平等をなくそう】とスペシャルティコーヒー

先ほどの1の目標とも深く関係しますが、コーヒー業界においては、生産国と消費国の経済格差が問題視されてきました。【人や国の不平等をなくそう】というゴールには、スペシャルティコーヒー3大要件のひとつである『トレーサビリティの確保』が重要な役割を果たします。

生産国と消費国 経済格差の要因とは

コーヒーの生産国と消費国の経済格差が起こる要因には、以下の様なものがあります。

・コーヒーという作物栽培における地理的事由

・生産国の多くがかつて先進国による植民地支配を受けていたこと

・コーヒーの流通における中間搾取の横行

また、生産国内においても、大農園を所有する農園主は裕福で、賃金雇用されている労働者は貧しい、という状況も散見されます。

多くの労働者が働く大規模農園

スペシャルティコーヒー3大要件のひとつである【トレーサビリティがとれること】の大切さは、私たちのような消費者側からの目線で考えられがちです。

が、実は生産者にとっても非常に重要なことなのです。

自分たちの作っているコーヒーがどのような人たちの手を経て、どのように消費国へ渡るのか。それを明らかにすることは、公正公平な取引には必要不可欠になります。

透明性のあるコーヒー豆を使用することの大切さ

そうした取り組みが必要とされる中、私たちTHE COFFEESHOPが生豆の買い付けでお世話になっている、『TYPICA』という会社があります。

「世界中の生産者とロースターを繋ぐオンラインプラットフォーム」を運営するTYPICAですが、彼らから発行される請求書には、生産者報酬、輸送費、税金、手数料と、その金額の内訳が事細かに記されています。

(特に、内訳のうちもっとも多くの取り分が生産者に分配されていて、本当に素晴らしいと思います)

栽培されてから一杯のカップになるまで透明性を持って流通することが大切

かつてのコーヒー業界では、このような内訳は公にされず。またされたとしても、手数料として中間搾取が当たり前になっていました。

生産者・中間業者・ロースターとの間での透明性のあるトレーサビリティの確保、それによる公正な利益配分は、本項の実現に大きく寄与することでしょう。

SDGs【ゴール13:気候変動に具体的な対策を】とスペシャルティコーヒー

気候変動の問題は、農作物であるコーヒー生産において直接的に影響する、大変深刻な問題です。

コーヒー業界では『コーヒー2050年問題』と言われ、このままのペースで気温上昇が続けば、2050年にはアラビカ種を栽培できる農地が現在の50%にまで減ると言われています。

森の中で栽培されるエチオピアのフォレストコーヒー

この問題への取り組みとして、産地では自然に近い状態でのコーヒー栽培(フォレストコーヒー)が行われたり、シェードツリー(日陰を作ってコーヒーの成長速度を調節する)を植えることで、CO2吸収量を増加・土壌流出を防ぐ、といった取り組みが行われています。

さらに、コーヒー栽培においては環境保護を名目にした認証制度も多くあり、高品質なスペシャルティコーヒー生産に取り組む農園では、こうした認証を得ているところも少なくありません。

代表的なものには、森林保護をはじめとした持続可能な取り組みに対して与えられる”レインフィレストアライアンス”があります

THE COFFEESHOPの取り組み

気候変動に対する取り組みは、私たちTHE COFFEESHOPの店頭でも行っています。具体的には、下記のようなものです。

サトウキビを原料にした生分解性ストローの使用と、堆肥としての再利用

エコバックの販売、手提げ袋の有料化による資源の節約

出涸らし等の染料としての再利用

それぞれ些細なものかもしれませんが、私たちひとりひとりの小さな協力の積み重ねが、地球規模の気候変動への対策になっていくと考えています。

SDGs【ゴール16:平和と公正をすべての人に】とスペシャルティコーヒー

コーヒーが平和な世界に貢献する、と聞くと、「なんだ、精神的な話か」と思われるかもしれません。もちろん飲むとホッとする、といった効能もありますが、スペシャルティコーヒーの発展は実際に世界平和に大きく貢献している側面があります。

素晴らしい品質のスペシャルティコーヒー生産地として知られるアフリカの国々には、植民地支配や民族紛争、資源戦争といった、悲しい歴史を歩んできた(いまもその真っ只中にいる)国も少なくありません。そのような国において、先進国へのコーヒー輸出は、外貨獲得・国民の収入源としてとても重要な役割を果たしています。

ルワンダのコーヒー生産者

90年代、凄惨な出来事に見舞われたルワンダという国では現在、諸外国からの支援を得ながら国をあげて良質なスペシャルティコーヒー栽培に取り組んでいます。その結果、ここ数年で素晴らしいコーヒーを生産する国として注目を集め、経済発展と平和維持に貢献しています。

伝統的手法でのコーヒー生産が行われるインドネシア

また、南米や東南アジアでは、生活のために安いコーヒーではなく、高く売れるコカやケシの栽培が行われるという実態があります。これらの地域は高品質なコーヒー栽培に適した地理的条件も揃っていることもあり、そうした作物の代わりにスペシャルティコーヒー栽培を行うことで、平和で持続可能な産業を続けていくことができるのです。

まとめ

SDGsの各項目を見ると、それぞれの内容が独立したものではなく、互いに繋がりあっていることに気付きます。今回はスペシャルティコーヒーとの関連性というところで、わかりやすい4つに焦点を当ててお伝えしてきましたが、実際にはもっとたくさん、いや全部のゴールに関わっているといっても過言ではないと思います。

SDGsの実現のためには、毎日の些細なことから意識をしていくことが大切です。私たちが毎朝飲む1杯のコーヒー、そのコーヒーにスペシャルティグレードのものを選ぶことは、毎日の生活の中でできるSDGs貢献のひとつと言えるのではないでしょうか。

「美味しいから飲む」というのも大変嬉しいお言葉ですが、SDGsの観点からもスペシャルティコーヒーを選ぶ人が増えてくれたら、とても嬉しいなと思います!

出典・参考:『コーヒーで読み解くSDGs』著 Jose.川島良彰、池本 幸生、山下 加夏 ポプラ社

SCAJニューズレターVol.68

WRITER

THE COFFEESHOP

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