2024年ブラジル買付旅行記|vol.2 – Fazenda Santa Helena

2024年7月22日から13日間、ブラジルへコーヒー豆の買付・視察に行ってきました!
今回はその旅行記として、現地の写真とともに皆さまへ買い付けの様子をお届けできればと思います!
THE COFFEESHOP、初のブラジル・オリジントリップ!

今回のオリジントリップは、独自のセレクトで素晴らしいコーヒーを届けてくれるマイクロインポーター、SYU・HA・RI COFFEE IMPORTSの代表 辻本さんにお声がけいただき、来クロップの買い付けに同行させていただきました。
世界のコーヒー生産量のうち、約1/3を担っているブラジルですが、THE COFFEESHOPにとっても最重要生産国のひとつ。シングルオリジンとして通年1種類は必ずラインナップしているほか、ハウスブレンドのLight MixやDark Mixにも使用しており、全生産国のなかでも一番取扱量の多いオリジンになっています。
コーヒーを生業にする者として、一度は行きたいと思っていたブラジルのコーヒー農園。念願の訪問実現です。
今回の記事はVol.2として、スペシャルティコーヒー生産に特化した地域、Carmo de Minas(カルモデミナス)にある農園をご紹介します。
Vol.1をまだお読みいただいていない方は、ぜひそちらからご覧ください!
ブラジルを代表するスペシャルティコーヒー生産地・Carmo de Minas(カルモデミナス)

Cerradoで大規模農園を訪れたあとに向かったのは、ブラジル南東部に位置するミナスジェライス州、カルモデミナス。ブラジルが誇る広大なコーヒー生産地の中でも、ここは特にスペシャルティグレードの産地として知られています。
その秘密は豊かな土壌と起伏に富んだ地形。ブラジル国内でも標高が高く、昼夜の寒暖差が大きくなるため、スペシャルティの栽培に適しています。

坂道に囲まれた盆地にある町・São Lourenço
滞在したのはカルモデミナスの東にあるSão Lourenço(サン・ロレンソ)という町。この地域らしく坂道が多く、街の中心にある公園は湧水が有名で、ちょっとした地方の観光地といった趣。比較的治安もよく、夜でも安心して出歩けるほどです。

THE のどかな地方の観光地という街並み

町の観光案内MAP

大きな湖がある公園の周りを散歩。園内には7つの違う湧水源がある。

この町で採れるミネラルウォーターはこのボトルで売られている。普通に美味しい水。

湧水源のひとつ。場所によってミネラルの配合が異なり、それぞれの効能などが謳われている。味はいまひとつ。
エクスポーター・E2 COFFEE

スケールの大きさを感じるE2 COFFEE
カルモデミナスで農園を案内してくれたのは、この地でコーヒー生産と輸出業を営むE2 COFFEE。彼らは契約した生産者とともにコーヒー栽培に関わり、ドライミルでの精製、国内外への輸出を行っています。また、自社で焙煎もしていて、焙煎豆の卸とコーヒーショップの運営もしています。その店舗数は国内600店舗、卸先は700店舗にものぼるそう。さらにコーヒーだけではなく、カーボンや中古車販売、物流会社まで手広く展開。ビジネスとしてかなり成功している会社のようでした。

巨大な焙煎機がフル稼働していた

ロースター併設のカフェスペース

巨大な倉庫。豆だけでなくマシン類も天高く積まれている
Fazenda Santa Helena

ナチュラルプロセスの乾燥パティオ
Fazenda Santa Helenaはカルモデミナスで4代続く農園です。農業技師でもあるErnani Pereira(エルナーニ・ペレイラ)を中心に、妹と母と家族で農園を運営しています。
農園の歴史が始まった当初はコーヒー栽培は行っておらず、エルナーニの父が27haのコーヒー用農地を開拓したことから始まりました。現在ではその敷地を広げ、コーヒー農地は50haにもなっているそうです。

真ん中にいるのが代表のエルナーニ氏

農園の入り口では畜産も行っていた
農園は丘の斜面に沿うように広がっており、高い標高を活かしてコーヒー栽培が行われています。農園内でも標高差があるため、カトゥアイ、ムンドノーボ、イエローブルボンなど、エリアによって栽培品種を分けていると言います。

斜面に沿って植えられたコーヒーの木

丘の上からはカルモデミナスの町が一望できる

比較的標高が高いエリアに植えられているイエローブルボン
コーヒーの木は斜面に沿って植えられているため、作業はすべて手作業。収穫期には30人程度のピッカーを集めて作業にあたっています。
同じブラジルの農園でも、vol.1で訪れたFazenda Rio Brilhanteではほぼすべてが機械収穫だったのと比べて、かなりの違いがあることがわかります。

パティオ横の巨大なサイロ

整えられた農園の景色
Fazenda Santa Helenaのコーヒー豆は、THE COFFEESHOPでも2023年から取り扱いさせてもらっています。
ブラジルらしいしっかりとした、それでいて丸みのあるボディと甘さがあり、同時に高標高が為せるフルーティなフレーバーも感じられるコーヒーで、主にDark Mixのメインとして使用させてもらっています。
今回の訪問にあたって、エルナーニに直接自分の焙煎したコーヒー豆を渡すことができたのは本当に嬉しかったです。

特別なパッケージに入れてプレゼントさせてもらいました
このFazenda Santa Helenaを訪れて強く感じたのは、テロワールの力強さ。農業技師であるエルナーニはもちろん丁寧にコーヒー生産に取り組んでいますが、特殊な精製プロセスは一切行うことなく、それでも素晴らしい品質のコーヒーを生産しています。
その秘訣はエルナーニ曰く、恵まれた標高と土壌にあると言います。コーヒー生産は農業である以上、どんな環境で生育したかがコーヒーの味わいを大きく決定づけます。
丘の上の冷涼な空気と綺麗な水、栄養豊富な土壌こそがスペシャルティコーヒー生産に最も重要なのだと、まざまざと感じ取れました。

丘の上には手作りのブランコ

美しいカルモデミナスの風景
しかし、そんな恵まれた環境にあるカルモデミナスでも、気候変動の影響を感じているそう。2024年は平均気温が例年より高く、それによってコーヒーの開花のタイミングがズレてしまい、生育にムラができてしまったとのこと。また、降雨のタイミングも読めなくなってきているそうで、乾燥工程にも影響がでています。
目下、ブラジルの気候問題はコーヒー市場価格の高騰に大きく影響しています。この訪問の際にも、価格面でかなり揉めているところも目にしました。気候問題はすぐに解決できるものではありませんが、消費国のロースターとして何ができるのか、真剣に向き合っていく必要があると強く感じた訪問でした。
次回、Vol.3では同じくカルモデミナスの別農園、Caio Pereiraが営むFazenda Do Serradoと、ドライミルCOCARIVEへの訪問レポートをお届けします!
WRITER
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Daito Hagiwara
THE COFFEESHOPロースター
THE COFFEESHOPにて取り扱うすべてのコーヒー豆の仕入れと焙煎・クオリティコントロールを担当。日々焙煎の研究とコーヒー豆の品質チェックを行う。2024年Next up Roasting Championship優勝。
毎週日曜日18:30〜Instagram、YouTube、Xスペースでライブ配信中!