Monthly Beans Magazine｜2023年6月号 [vol.105]

このコラムを書いている5月中旬ごろ、中米やアフリカの買付オファーのピークを迎えています。

さまざまな商社や輸入パートナー企業さんたちによるカッピング会に参加させてもらっていて、今年の夏以降に入ってくるコーヒーを選んでる真っ最中です。

特に5/15(月)からの週は、全部で4社の買付カッピングに行ってきたのですが、うち3社のサンプルの中にコスタリカのロットが載っていて、どのコーヒーにしようか、とても頭を悩ませています。

中米でも特に先進的な取り組みを行なっているコスタリカは、精製に工夫を凝らしたロットも多くありましたが、なかでも印象的だったのは、海ノ向こうコーヒーさんの紹介してくれたロットでした。全部で10種類のサンプルのうち、9種が”ハイブリッド品種”だったのです。

“ハイブリッド品種”とは、風味に優れるとされるアラビカ種系の品種と、病気への耐性があり収穫量も多いロブスタ種系の品種を、人工的に交配させたものを指します。それぞれの良いところを持ち合わせて、栽培しやすくて風味も良いコーヒーを目指したハイブリッド品種ですが、ここ2年くらいで目にする機会がとても多くなってきました。

さらに、単に数が増えてきただけでなく、風味の面でもかなり向上しているように感じています。

ハイブリッド品種が増えてきた背景には、地球規模の気候変動への対応という理由があります。

このままのペースで気温の上昇が続くと、2050年には現在のアラビカ種の栽培地域のうち、50%もの場所で栽培が難しくなるという、いわゆる『2050年問題』が叫ばれています。比較的低地でも栽培が可能なハイブリッド種への植え替えは、気候変動に対するリスクヘッジのひとつになっているようです。

こうした品種の研究や苗木の配布は、生産国の機関やコーヒー生豆の輸出入業社によるプロジェクトなどによって行われています。

今回の海ノ向こうコーヒーさんのオファーは、そうした取り組みを行なっている輸出業者と、それに賛同した生産者のコーヒーをセレクトしたものだったんですね。

ハイブリッド品種が登場したのは、コーヒーの歴史からするとごく最近のこと。世に出始めた当初は、ロブスタ系の風味が強いとされて、あまり美味しさの面では評価されていませんでした。

しかし、今回カップさせてもらったコスタリカのハイブリッド品種は、どれも伝統的な品種と比べても遜色なく、コスタリカのテロワールもしっかりと感じられるクオリティでした。

また、コスタリカだけでなくコロンビアのCastilloやホンジュラスのParainemaなど、それぞれの国に適した高品質なハイブリッド品種も続々と増えてきているように感じます。

これはひとえにコーヒー生産に関わる人たちの努力の結果に他なりません。次世代のスペシャルティを支えていくであろうハイブリッド品種、これからも目が離せませんね！

（Roaster / Daito Hagiwara）

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