軟水硬水【コーヒーに合うのはどっち?】おすすめの水とその理由とは
コーヒーを淹れる時、必ず必要になる『水』。
コーヒーの品種・産地も様々ありますが、水の種類もたくさんありますよね。
抽出技術を競う大会などでは、水選びからはじめる競技者や、成分を調整してカスタムウォーターを作成する人もいてかなり慎重に選定されています。
そこで今回は軟水と硬水を例にあげて、コーヒーの味わいにどれだけ水が影響するのか、検証と解説をしていきます。
軟水と硬水の違いとは?
水の種類を軟水・硬水で区別する際の判断基準は、〈マグネシウムイオンとカルシウムイオン(ミネラルのこと)の含有量〉です。
詳しい計算方法は今回省略しますが、一般的に含有量が120より低いと軟水、それ以上だと硬水と分類されます。
ちなみに日本の水道水は基本的に軟水で、ヨーロッパでは硬水が主流です。
今回は、以下4種類の市販品を用いて検証を行います。
白神山地の水(超軟水)
生産国:日本
硬度:0.2
pH:6.6
南アルプスの天然水(軟水)
生産国:日本
硬度:30
pH:約7
エヴィアン(硬水)
生産国:フランス
硬度:340
pH:7.2
コントレックス(超硬水)
生産国:フランス
硬度:1468
pH:7.4
コーヒー飲み比べ検証|美味しく淹れられる水はどれだ?
今回の検証方法は、カッピングを用いて行います。
抽出で行うと、私たちプロの手で淹れたものでも、わずかに味のブレが生じるためです。
そして、今回使用したコーヒー豆はこちら。
Nicaragua(ニカラグア)/ El Bosque NA(エル・ボスケ・ナチュラルアナエロビック)
ゴールドラムや、プルーン、巨峰など香りが豊かなコーヒー。チョコレートのような風味と甘さが長く続くコーヒー豆です。
検証結果1,白神山地の水(超軟水)
クラスト:
香りに甘さがある印象。
普段行っているカッピングと同じような香りを感じました。
ブレイク:
若干香りの弱さを感じるものの、ほぼいつも通りでした。
味わい:
普段の味よりも薄く感じる結果に。
フレーバーや酸の印象が弱いため、少し苦めの水のような味わいでした。
検証結果2,南アルプスの天然水(軟水)
クラスト:
白神山地の水と同様の印象に。
ブレイク:
普段のカッピングの時の香りに一番近かったです。
馴染みがあるからか、甘さの印象を感じました。
味わい:
超軟水のものよりも、酸味・フレーバーの印象が強く、甘さとバランスがとれた味わいに。
「いつも通りの味」といった結果になりました。
検証結果3、エヴィアン(硬水)
クラスト:
お湯を注いだ時、軟水よりも粉が膨らみ、やや鉄分を含んだような香りを感じました。
ブレイク:
クラスト時に感じた硬い印象は薄くなり、軟水とほぼ変わらない結果となりました。
味わい:
質感に重みを感じる出来上がりに。
よく言えば丸みのある質感といえますが、フレーバーに曇りがあるため、ポジティブな表現は難しい。
スペシャリティーコーヒーの良さを活かしきれないといった所でしょうか。
検証結果4、コントレックス(超硬水)
クラスト:
粉が一番膨らみ、ややハーブのような青っぽい香りを感じました。
硬水というイメージがあるからかもしれませんが、少し金属的な香りの印象でもありました。
ブレイク:
クラスト時のハーブや金属的な香りが強くなり、普段の香りとは一番差が出る結果に。
味わい:
今回の4種類の中では最も重たく、暗い味わいになりました。
不味いとは言いませんが、フレーバーや酸味、甘さの印象が引き出せておらず、コーヒー豆の良い部分は取り出せていないと言わざるをえません。
またアフターの伸びも悪く、口の中で味わいが広がっていかないため、豆の種類を変えても最大限に美味しいコーヒーを抽出するのは難しそうです。
総評
水の硬度が低いもの(軟水)を使ったものほど、出来上がるコーヒーの濃度が薄く、硬度が高いもの(硬水)ほど濃度が濃くなる結果となりました。
硬水の方が成分を多く取り出している、いわゆる過抽出の味わいになりやすいことがわかりました。
20分程度経って冷めた時の味も確認しましたが、おおよそ上記の結果と変わらない印象でした。
ちなみにミネラル分を多く含む硬水の方が、成分が溶け出しにくい(浸透圧の関係で)イメージです。
しかしなぜ全くの逆の結果になったのでしょうか。
この後、詳細お伝えしていきます。
スペシャルティだからこそ拘りたい 硬水軟水から生じるコーヒーの味の違い
上記の検証の結果、硬水の方がより濃度が高い印象のコーヒーが出来上がりました。
ではなぜ、軟水と硬水でここまで味の違いが生まれたのか…
大きな原因は〈ミネラルの含有量(マグネシウムイオン・カルシウムイオン)〉と考えられます。
マグネシウムイオンやカルシウムイオンは、コーヒーの香味成分と結合することで、変容や反応を起こしやすくなります。
そのため、コーヒー成分の取り出しの妨げになったり、逆に苦味や渋みの成分を多く取り出してしまったりなど、様々な影響が考えられ、必然的にミネラルを多く含んだ硬水の方が、抽出される味に変化が生まれてきます。
コントレックスのような超硬水で抽出したコーヒーに、トゲトゲしさや、ネガティヴな印象が多かったことも、ミネラルが大きく関わっていると考えて問題なさそうです。
逆に超軟水を使ったコーヒーに味や香りの物足りなさを感じた理由は、ミネラルの影響が極端に少なく、十分に成分を抽出できていなかったせいと考えられます。
このような結果から、コーヒーの抽出に向いている水は〈適度なミネラルが配合された水(軟水)〉ということ結論になりました。
ミネラルウォーターを使うなら、南アルプスの天然水(軟水)がおすすめ
今回は少しマニアックな内容でしたが、一番手軽に扱える水もコーヒー抽出においてはかなり重要だということが確認できたと思います。
ご自宅でここまでこだわる方は少ないかもしれませんが、もしボトルで水を購入する機会があれば、適度なミネラルを含んだ軟水がおすすめです!
記事冒頭で記載した通り、カスタムウォーターを使用した抽出も大会などでは当たり前に行われているので、次回の検証でもう少し深掘りできたらと思っています。お楽しみに!
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