【ハンドドリップ・中級編】正しいお湯の注ぎ方〈サークルプアとセンタープアの比較〉

2024.04.08


お湯の注ぎ方、みなさんは意識したことがありますか?
コーヒーの抽出レシピなどを紹介しているサイトをよく見るのですが、はっきりとお湯の注ぎ方まで明記しているサイトは少ないように思います。

THE COFFEESHOPで色々な検証を担当させていただくことも多くなり、味の違いを確認していく中で〈お湯の注ぎ方〉で出来上がったコーヒーに変化が出ることがわかってきました。

そこで今回は、抽出レシピは同じまま、お湯の注ぎ方だけ変更した場合の味の変化をご紹介していきたいと思います。

お湯の注ぎ方「サークルプア」と「センタープア」とは?

ハンドドリップにおけるお湯の注ぎ方は、大きく2つの種類があります。
円を描きながらお湯を粉全体的に回しかける〈サークルプア〉、粉の中心1点にお湯を注ぐ〈センタープア〉の2種類です。

個人的な感覚なのですが、日本ではサークルプアが一般的で、センタープアはネルドリップの点滴抽出のように少し専門的な印象があります。

ハンドドリップの腕はお湯の注ぎ方で決まる!?

実際にお湯の注ぎ方を変えたハンドドリップのレシピでコーヒーを抽出し、味の違いがあるのか確認してきましょう!
冒頭でもお伝えしましたが、今回は抽出レシピは共通のものを使用し、注ぎ方だけ変化した場合の比較検証になります。

共通事項は下記の通りです。

使用するコーヒー豆

Ethiopia / Tamiru Tadesse Bona Zuria(終売)

アプリコットやライム、白ワイン、オレンジ、ほのかにマスカットや日本茶のような風味。 さらりとした質感で、ホワイトチョコレートのような甘さが長く続きます。

ハンドドリップ 抽出レシピ

豆:19g(中粗挽き程度)
お湯:300g(91℃)
器具:HARIO V60ドリッパー、アバカペーパーフィルター

0’00″~0’15”    50g
0’35″~0’50”    70g
1’05″~1’20”     80g
1’35″~1’50”    100g

2’45″になったらドリッパー内にお湯が残っていても外す

①サークルプアの結果

落ちきり目安だった2’45″ではドリッパー内にお湯が残りました。
香りはティーライクやアプリコットなど、甘さをともなったすっきりするイメージ、甘さの印象もクリアな雰囲気を保ちながらしっかりした後味で長く続きます。

個人的にカップコメントで表現すると時に明確なコメントがつけられるような、味全体的に立体感を感じる仕上がりになりました。

②センタープアの結果

2’38″でお湯が落ちきり、香りの印象はサークルプアよりも弱めで、ティーライクとまではいきませんでしたが、やや甘さのあるフレーバーとほのかなシトラス系のフレーバーを感じます。

一番大きく違いを感じた点は後味の長さで、センタープアの方が圧倒的に短め。
口当たりは同じような印象でしたが、後味が続かないため甘さ・酸味ともに弱々しくなりました。

①ではカップコメントのフルーツ感やきれいな甘さを感じられましたが、②はコメントをつける時はややはっきりしないコメントがつきそうです。(ストーンフルーツ、シトラスなど大まかなくくりでコメント評価されそうなイメージ)

濃度計『ATAGO(アタゴ)』で味覚だけではなく数値も確認

お湯の注ぎ方を変えることで、コーヒーの味の違いもはっきり感じることができました。
味覚という定性的なものだけでは曖昧、ということで、それぞれの成分の数値も計測してみました。
濃度計で以下2つの数値を計測しました。

TDS:
出来上がったコーヒーに溶け出しているコーヒー成分の数値

Brix:
コーヒー100g中に含まれているショ糖のg数

コーヒーの適性抽出においてよく確認されるのはTDSで、スペシャリティーコーヒー協会(SCA)では1.15~1.35%が適正でるあるとされています。

今回の検証結果を測定してみたところ、以下の数値になりました。

①サークルプア
TDS:1.23   Brix:1.55

②センタープア
TDS:0.94   Brix:0.74

数値も見てみると、サークルプアは適性抽出範囲、センタープアは未抽出気味の結果に。
味覚の印象で②の方が全体的に弱い印象があったのは、粉から成分を十分に抽出出来ていなかったからだと考えられます。

お湯の注ぎ方で失敗しない!コツや改善方法をご紹介

今回の検証では、センタープアは未抽出気味の結果になりました。
ハンドドリップでの抽出時、無意識にセンタープア寄りにお湯を注いでしまわないよう注意したいものです。

が、それもなかなか難しい。
どの程度回し注いだらいいかの判断は、検証を重ねないと答えにたどり着くのは難しそうです。
ということで、最後にヒントとして、センタープア寄りになってしまった場合でも、美味しく抽出するコツをお伝えしておきます。

センタープアのメリットは、粉の過剰な攪拌を抑え雑味を軽減するといった点も挙げられると思います。
そこで、センタープアで美味しく抽出できるレシピを考えてみました。
『未抽出気味のセンタープアを適性抽出にする』ことが改善の目的なので、以下の点を変更してみました。

①挽き目を中挽き程度に変更し、細かくする
②1投あたり15秒かけて注いでいたお湯を、20秒間隔に変更しお湯を細く長く注いでみる
③蒸らしの時間を伸ばす

変更後のレシピ

豆:19g(中挽き程度)
お湯:300g(91℃)
器具:HARIO V60ドリッパー、アバカペーパーフィルター

0’00″~0’20”    50g
0’50″~1’10”    70g
1’30″~1’50”     80g
2’10″~2’30”    100g

3’00″になったらドリッパー内にお湯が残っていても外す

しっかりしたフレーバーと甘さ・酸味のバランスが整ったコーヒーに仕上がりました。
酸味の印象もクリアになり、ママレードジャムのような味わいが特徴的です。
課題だったアフターテイストも心地よく長く続くので、改善レシピとしては問題ないと思います。

念の為濃度計で計測してみた結果、TDS:1.22  Brix:1.54と数値的にも適性抽出範囲内に収まりました。

まとめ

今回は、ハンドドリップ時のお湯の注ぎ方でコーヒーの味に違いがでるのか、特徴などをそれぞれご紹介しました。

サークルプアは浅煎り〜深煎りで焙煎から日が経っていないコーヒー豆を使う時に未抽出を防ぎやすくなりますし、センタープアは深煎りの豆をすっきり飲みたい時や、焙煎からやや日が経ってしまった豆を美味しく抽出する時に向いていると感じました。

もちろん、一回の抽出で2種類の注ぎ方を組み合わせて味作りをする場合も多いですし、一言でサークルプアといっても回す円の大きさや注ぎの勢いでも変化があります。いろいろな注ぎ方を試しながら、自分好みの味わいを見つけていくことが大切ですね。

お好みの味をご自宅で再現する時にお役に立てたら嬉しいです。


SERVICE