徹底解説!ブリューレシオとは?コーヒーの抽出比率 湯量と粉量の美味しい関係とは?

2023.09.29


コーヒーをより美味しく淹れようとする時に、重要になるお湯と粉の比率。
専門用語で「ブリューレシオ(brew ratio)」と言いますが、みなさんはコーヒーの粉の量と、お湯の量の比率、気にされたことはありますか?

すでにご自分の好みの濃さに抽出できるよう、お湯量と粉量の比率を決めている方もいれば、気にしたことすらない!という方も様々だと思います。

今回は「ブリューレシオ」に関しての解説と、美味しくコーヒーを淹れる比率に共通点があるのか、探っていきます。

コーヒー抽出における ブリューレシオ(brew ratio)とは?

横文字で表すとちょっと専門的に聞こえますが、ブリューレシオとは、「抽出の比率」のことです。
コーヒーの粉量を1とした時、使用する湯量がどのくらいなのかを数字で表したものですね。

例えば、コーヒーの粉を10g:お湯を150g使用するレシピだった場合、ブリューレシオは1:15となります。

ブリューレシオの右側が小さくなればなるほど、出来上がるコーヒーの濃度も濃くなり、大きくなればなるほどコーヒーの濃度は薄まるということになります。

ブリューレシオにはスタンダード(標準値)がある

世の中には、数えきれないほどのコーヒー抽出レシピがありますが、そもそもレシピを組み立てようとした時に重要になるのが、ブリューレシオです。
コーヒーの材料である粉の量と、使用するお湯の量を決めるわけですから、味わいの軸になるのは間違いないありません。

ではそのブリューレシオに、スタンダード、いわゆる標準値はあるのでしょうか?
実は、実際に公開されている大会チャンピオンや、コーヒー専門店のレシピを見てみると、ブリューレシオ自体は同じであることが意外と多いのです。

◯WORLD BREWERS CUP 2014チャンピオンレシピ→粉:18g、お湯:300ml(1:16)
◯WORLD AERO PRESS CUP 2014チャンピオンレシピ→粉:16.5g、お湯:250ml(1:15.1)
◯WORLD BREWERS CUP 2016チャンピオンレシピ→粉:20g、お湯:300ml(1:15)
◯THE COFFEESHOP レシピ(ハンドドリップ/エアロプレス)→粉:20g、お湯:300ml(1:15)
◯THE COFFEESHOP レシピ(フレンチプレス/アメリカンプレス)→粉:18g、お湯:300ml(1:16)

などなど…

フィルターを2枚使用したり、粉をふるいにかけシルバースキンなどを取り除くなど、特別な工程を踏まえない、シンプルなレシピを見てみると、ブリューレシオは〈1:15~1:16〉で構成されているものが多いように思えます。

なぜ〈1:15、1:16〉が主流なのか より美味しいコーヒーを求めて

ではなぜ〈1:15~1:16〉のブリューレシオが主流になっているのでしょうか?
粉量とお湯量の比率を変えて抽出し、濃度と味わいの関係性を検証してみました!

検証内容

浅煎りと深煎りの粉を使用し、THE COFFEESHOPハンドドリップレシピで豆量の増減を行なって抽出。
出来上がった味わいと濃度数値の平均を取るためにそれぞれ3回ずつ抽出を行いました。

今回は検証結果を記載する際に、濃度の数値を2種類使用しています。

Brix→出来上がったコーヒー100g中に含まれるショ糖のg数
TDS→出来上がったコーヒーにコーヒー成分がどのくらい含まれているかの数値

※この2つは解説していくと少し時間がかかってしまうので、今回は検証結果の数値として捉えていただければと思います。
なお、TDSはスペシャリティーコーヒー協会(SCA)で、1.15~1.35%が適正でるあるとされています。

検証条件・抽出レシピ

①お湯は沸かしたてをケトルに移し、すぐに使用する。
②粉はその都度必要分を計量し、挽きたてを使用する。
③浅煎りは2分30秒、深煎りは2分10秒でドリッパーを外す。

使用器具:ハリオV60
粉:18g、お湯:300ml
(ブリューレシオは1:16)

0’00”~0’10”  60g
0’40”~0’55”  80g
1’05”~1’20”  90g
1’30”~1’40”  70g

検証結果

▷粉を2g増量した場合

1回目→Brix:1.69  TDS:1.35
2回目→Brix:1.73  TDS:1.37
3回目→Brix:1.71  TDS:1.36

味わいの特徴

香り・酸味ともにはっきりしており、TDSも適正内におさまった結果もありますが、
後味にえぐみが残る印象。

▷粉を2g減らした場合

1回目→Brix:1.29  TDS:1.03
2回目→Brix:1.27  TDS:1.00
3回目→Brix:1.26  TDS:1.00

味わいの特徴

味全体が薄くぼやけた印象。
後味がソルティーで、TDSも基準を大きく下回っているため、典型例な抽出不足の味わい。

▷通常レシピ

1回目→Brix:1.58  TDS:1.27
2回目→Brix:1.56  TDS:1.24
3回目→Brix:1.54  TDS:1.22<

味わいの特徴

2g増やした結果より、香りと酸味は落ち着くものの、甘酸っぱい後味が長く続く。

深煎りのコーヒー豆を使用して同様の検証を行いましたが、いずれも浅煎りと差異がない結果になりました。

私達コーヒーのプロは数値と感覚で『美味しさ』を判断しています

検証の結果、ブリューレシオに1:15~1:16が多い理由の一つとして、〈TDSが適正範囲内に収まりやすいから〉ということがわかりました。

TDS→出来上がったコーヒーにコーヒー成分がどのくらい含まれているかの数値

TDSが適正範囲内に収まるということは、出来上がったコーヒーの中に、コーヒー成分が程よく含まれている。という一定の基準になります。

レシピを作成する上で大切なのは【出来上がったコーヒーが美味しいのか】ですが、過抽出や未抽出といった味の印象を、飲み手やバリスタの味覚だけではなく、数値化することで客観的に判断することも必要になります。

一見化学の実験のようにも思えますが、お店で提供されるコーヒーや、大会に出場する選手たちは、このような過程を経てレシピを作成していることが多いです。

また、TDSだけではなく〈収率〉という数値も関係しており、今回の検証では豆量を変えたことで、出来上がったコーヒーの収率も変化しています。

収率とは使用したコーヒーの豆から、どのくらい成分を取り出すことができたのかを示す値で、一見TDSと混同しそうになるのですが、TDSは出来上がったコーヒーの濃度を測定しており、収率はコーヒー豆から取り出せた成分の多さを測定しています。
分母が異なるため算出される数値の意味合いも異なりますね。

収率は【TDS%×コーヒー抽出量(出来上がったコーヒーの量)÷使用したコーヒー豆量】で求められ、SCA(スペシャルティコーヒー協会)では18%~22%内が適正な数値と定められています。

客観的な数値を利用しながらコーヒーを楽しむ

今回はブリューレシオ、それに付随してTDSと収率の関係性をまとめてみました。
もちろん数値は客観的判断の材料に過ぎず、味覚は人それぞれなので美味しいと感じる味わいも異なってきます。

適正値から外れたものが、まずいコーヒーというわけではありません。
この記事がコーヒーの抽出にもっと興味をもっていただけるきっかけになれば嬉しいです。

SCAがまとめているブリューチャートの記事も下記リンク内にありますので、気になった方はチェックしてみてください!
TDS、収率だけではなく、味の強弱を観点に加えた新しいブリューチャート考案の記事です。
https://sca.coffee/sca-news/25/issue-13/towards-a-new-brewing-chart

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