コーヒー豆が「蒸らし」で膨らまない時は?「蒸らし」の目的や方法、最適な時間について解説します。

2024.03.26


コーヒーを淹れる方なら、〈蒸らし〉という単語を誰でも気にしたことがあるのではないでしょうか。
店頭でご質問をいただくこともありますし、美味しくお飲みいただくためにスタッフからおすすめの蒸らし時間をお伝えすることもあります。

そこで今回は、コーヒー抽出に深く関わる蒸らしについて、効果や意味を説明しながら、蒸らし時間が変化するとコーヒーの味にも違いが生まれるのか、検証していきたいと思います。

コーヒー豆が「蒸らし」で膨らまない時は?「蒸らし」の目的や方法、最適な時間について解説します。

「蒸らし」にはどんな意味があるのか

コーヒーを淹れる際の「蒸らし」には、スムーズな抽出を行う前準備的な意味があります。

粉とお湯を触れ合わせることで、粉に含まれるガスを逃がすとともに、粉全体にお湯の通り道を作ることで、2投目以降に注ぐお湯が行き渡るようになります。

コーヒーの粉には、焙煎時に発生した二酸化炭素がガスとして含まれており、ガスは成分の溶け出しを妨げる原因になります。
焙煎したての粉を使って淹れたコーヒーが薄く感じるのは、ガスが妨げになって未抽出となるパターンが多いです。

コーヒー豆が膨らまないのはなぜか?

よく、〈粉がよく膨らむ=豆が新鮮な証拠で美味しく抽出できる〉と言われますが、上記の蒸らしの観点から豆が新鮮であれば、自動的に美味しいコーヒーができるとは言い難いと個人的に考えています。

もちろん、焙煎から日が経っていないコーヒー豆を購入するのはよいことなのですが、粉がよく膨らむ=豆にガスが含まれているということになりますので、成分はより溶け出しにくい状況です。
抽出時間を伸ばすだけではなく、いかに効率的に粉から成分を取り出すのかを考えながら、レシピを応用していく必要があります。

コーヒー豆が「蒸らし」で膨らまない時は?「蒸らし」の目的や方法、最適な時間について解説します。

また、豆の焙煎度でも粉の膨らみには差ができます。
焙煎が進めば進むほど(深煎りになればなるほど)豆の中に含まれる二酸化炭素は多くなり、浅煎りであればガスではなくより水分やその他の成分が多くなります。

深煎りの豆を使用した時によく粉が膨らむのは、含まれているガスの多さも原因の一つです。

ご自身が用意した豆がどんな焙煎度合いなのか、焙煎からどれだけ日が経っているのかを抽出の時に確認してみると、どんな抽出を行えば美味しくできるのか、よりわかりやすくなると思います。

「蒸らし時間」の違いによるコーヒーの味の違いを検証

では実際に、蒸らしの時間だけ変更して抽出してみましょう。
今回は、粉量・湯量・湯温・投入回数は変えずに、〈蒸らし時間〉に重きをおいて検証します。

投入ごとの差でできるだけ味の変化がでないよう2回投入のレシピを使用したかったため、CAFEC DEEP27ドリッパーを採用しました。

また、味覚だけで判断するのではなく、濃度計のアタゴを使用しそれぞれの〈Brix・TDS〉も計測しました。
Brixは出来上がったコーヒー100g中に含まれるショ糖のg数 、TDSは出来上がったコーヒーにどの程度コーヒー成分が含まれているのかの数値になります。

コーヒー豆が「蒸らし」で膨らまない時は?「蒸らし」の目的や方法、最適な時間について解説します。

▼使用したコーヒー豆

El Salvador / La Hondurita & Machuca Pacamara Natural(終売)

中煎り。レッドグレープやラズベリー、ラクティック、紫の花、ブラウンスパイスのような風味。
溶かしバターのような質感で、キャラメルやメロンのようなふくよかで複雑な甘さがあります。

検証レシピ① 蒸らし時間20秒の場合

0’00”~0’10” 80g
0’30”~1’10” 150g
抽出時間合計:1分52秒に落ちきり

Brix:1.08
TDS:0.86

▼出来上がったコーヒーの特徴

味全体はやや弱い印象を持ちましたが、フレーバー優位なコーヒーが抽出できました。
紫がかったフローラルなフレーバーと、ティーライクな甘さが後味に優しく続き、酸味・甘さの印象は共に控えめです。

検証レシピ② 蒸らし時間35秒の場合

0’00”~0’10” 80g
0’45”~1’10” 150g
抽出時間合計:1分52秒(ややドリッパー内にお湯は残りました)

Brix:1.15
TDS:0.91

▼出来上がったコーヒーの特徴

20秒蒸らしの時よりも、より甘さにフォーカスされたコーヒーが抽出できました。 ミルクチョコレートのような輪郭のはっきりした甘さと、ストーンフルーツのような酸味を感じます。
後味の印象もよりしっかり長く続く結果になりました。

適切な「蒸らし」で美味しいコーヒーを!

上記の検証で、より味全体の輪郭をはっきり感じ立体的に感じられた②のレシピが、ショ糖とコーヒー成分を取り出せる結果となりました。

たった15秒の差ではありますが、蒸らしの時間が適正であればあるほど、2投目移行に溶け出す成分に影響があり、出来上がったコーヒーの味わいを決定していくことがわかったかと思います。

今回の記事の内容は、ライブ配信でもお届けした内容になりますので、もしご興味ありましたら動画もご覧ください。


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