2019.11.15コーヒー豆

近年のスペシャルティコーヒー世界市場について|生産と消費のいま

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年々消費量が増しているスペシャルティコーヒー。昨年2018年には、日本に輸入されるコーヒーのうち、スペシャルティコーヒーが占める割合が11%となり、過去4年間で最高となりました。

これからもっと盛り上がっていくであろうスペシャルティコーヒー市場。世界ではどうなっているのか、ワタル株式会社の松元啓太氏に伺ってみました。

スペシャルティコーヒー市場インタビュー

目次

アジアの盛り上がり|成長著しいのは韓国の自家焙煎

近年は、アジアでの盛り上がりがすごいですよ。例えば先日韓国に行ってきたんですが、ソウルだけで自家焙煎が2,000件以上あるそうです。自家焙煎がですよ!東京はおそらく200〜300ですから、いかに盛り上がっているか、お分りいただけるかと思います。

済州島(チェジュ)も凄くて、自家焙煎で100件以上あるみたいですね。沖縄くらいの小さな島で、60万人くらいの人口なんですが、暮らす人たちがなんかパワーがあるんですよね。日本と同じように少子化に困っていたり、今現在の景気も決して良くはないらしんですけど、パッと街を見ると飲食店で若い人たちが楽しそうに盛り上がっていて、活気があります。

それで今回私は、コーヒーリブレというスペシャルティコーヒーのお店に行ってきたんですが、ここは韓国で一番最初にQグレーダーを取得されたピルさんという方がやってらっしゃって、今年で10年になるお店です。

最初は本当に小さな自家焙煎店で、豆を売る傍、たまにコーヒースクールをやってみたり。少しずつビジネスを広げていっています。

3,4年前は月間約24トンの豆を扱っていましたが、今はその3倍近くに。月間約65トンの豆を売っているそうです。そこには生豆の販売も多く含まれていて、自家焙煎のお店が購入しているとのことでした。

味文化から生まれるアジア人の強み

韓国はそんな感じで伸びているわけですが、近年は香港であったり台湾であったり、コンテストで優勝または上位に入るアジア人が増えてきました。

アジアの文化から来るものなんでしょうけど、ディテールへの繊細なこだわりであったりとか、エキゾチックな表現が得意なんですよね。フレーバーホイールにない「旨味」であったり「塩味」であったり、あとはネガティブ表現では「渋」とか、独特な表現ができるのが強みだと思います。

欧米人からすると、え?っと思うような表現で、つい耳を傾けてしまう。コンテストは、技術はもちろんですが、プレゼンテーションの腕も問われるので、こうした独特の表現がウケているのだと思います。

コーヒー生産国としても注目のアジア

アジアは今、生産国としても力をつけていて、今年のSCAJでも、アジアの生産国からの出展が多くありました。

根底にあるのは、これから増えていくであろう消費量への対策なんでしょうけど。いつまでもブラジル、コロンビアなどの中南米頼みにはできないよねっていう。そこから買っているだけだと、そのうち足りなくなってしまうだろうと。

これから温暖化によって、コーヒーの産地は現象していくとも予想されています。供給量が追いつかなくなる現実は、我々が思っている以上に早く訪れるかもしれない。そうなった時、『きちんとした品質のものを適正な価格で流通できます』という産地を新たに作っておくというのは、業界にとってかなり重要なミッションかと思います。

当然ながら、現状はまだまだ中南米と並ぶことは出来ません。スペシャルティコーヒーの栽培は、品質だけ追い求めればいいわけではなく、関わる全ての仕事を俯瞰して作っていかなければなりませんからね。ブラジルやコロンビアは、国をあげてそこに注力してきた歴史もあり、今のような規模になっているわけです。

個人の努力の範囲でなんとかできるものではありませんし、これから膨大な時間を要するかと思いますが、気候条件など産地としてのポテンシャルはあるので、今後の発展に期待したいですね。

少量生産の魅力|アナエロビックとは

アジア以外というか、世界全体でみた場合、今年はアナエロビック(嫌気性発酵)の豆が増えたことが非常に興味深いですね。ロットのサイズが大きくできないのと、ロット単位での変化が大きいので、マイクロロットならではの楽しみといった感じです。

アナエロビックとは:
コーヒーの生産処理方法のひとつ。生産処理で除去された別ロットのミューシレージと、レッドハニーを混ぜて密閉。ミューシレージの酵素反応によって発生する炭酸ガスの圧力によって、パーチメントコーヒーの中に通常以上のミューシレージ成分を浸透させる。

2014,5年くらいにコスタリカで作られた技術ですが、考え方はワインのそれと同じです。発酵の力によって、とってもユニークな、シナモンを入れたような強いフレーバーになります。

まあ、ただ特殊なものではあるので、需要も供給もごく少量です。あまり多く作って売るというものではないので、カフェとかで飲めるかというと、そこまで流通が行き渡っているものではありません。

マイクロロットを売れるお店というと限られていますから、我々インポーターも思い切って持ってくるというわけにもいかないんですよね。生産者としても同じで、売れるとわかっているナチュラルを作るか、冒険してアナエロビックを作るか、慎重に選んでリソースを充てています。

とはいえ、こういったものをコンペティションの世界だけに留めておくというのももったいない話なので、これから多様化していくであろう消費者のニーズに届くよう、売り方も工夫していかないとですよね。

消費国で評価されるコーヒー豆は、食文化との密接な関係がある

消費という話を掘り下げると、国ごとに異なる食文化。ここに大きく依存してる傾向があるような気がします。

例えば日本の審査会では、カップの透明さが高く評価される傾向があって、フレーバーがどこまでクリアに出ているのか、そこに注目するんです。で、それはお茶文化からくるものなのではないかなと思います。

片や、中国や台湾のカッパー(審査人)が言っていたのは、ナチュラルプロセスの豆が良いと。それは、料理の脂分が多く、味が強いためだそうです。そこに合わせるコーヒーも、味や香りが強いものでないと物足りないみたいなんですよね。

あとはアメリカ。熱いうちにパッとカッピングして、いいね!華やかだね!買ってくわ!くらいの軽快さです。カフェの利用の仕方というか、コーヒーの飲み方自体がせっかちなものなんでしょうね。日本とは真反対で、これもこれで面白いと思います。日本のロースターは冷めるまでずっとカッピングし続けるんですが、それは日本人のコーヒーの飲み方がそうだからなんですよね。

こんな感じでお国柄、ライフスタイルや食文化というのは、その国のコーヒー文化と大きく繋がっているんです。

これから注目したいスペシャルティコーヒー産地

今後というか、ずっと期待しているものの、なかなか眠りから覚めて来ないのはアフリカなんですよね。ブルンジとかルワンダは非常に良い豆を作ってきていますが、まだまだもっと良いものができると思っています。

繰り返しになりますが、それは作物として品質だけではなく、消費のされ方まで含めて俯瞰した上での良いものです。生産者がいないと当然始まりすらしないわけですが、彼らが生産するメリットであったり、そこから繋がる仕事に関わる人たちのメリットであったり、国や政府のメリットであったり。

スペシャルティコーヒーというのは、本当に単一の作業だけでは成り立たないんですよね。だからこそ、良い消費の仕方を作っていかないといけない。生産側も消費側も、サスティナブルな魅力を作っていかなければいけません。

松元啓太氏 プロフィール

大学卒業後、ワタル株式会社入社。
一旦退職し、コスタリカで単独で1年 国立コーヒ協会Icafeで過ごす。
帰国後、ワタル株式会社へ再入社。駐在員としてグァテマラに4年間赴任する。
2002年にグァテマラにて STAR CUPPER のプログラムに参加し、2005年にはCQI認定Qグレーダー資格を取得。
現在はスペシャルティコーヒーの卸販売を担当する一方、COE(カップオブエクセレンス)運営団体ACEの役員を兼務。

BEANS NAVIバナー記事下

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