スペシャルティコーヒーの酸味について考える テイスティング編

2016.04.29


スペシャルティコーヒーのフレーバー表現を深堀りするシリーズ企画。

今回も、前回に引き続き、スペシャルティコーヒーの表現における『酸味』ついて、実際にテイスティングを行いながら考えます。

前回の記事をまだお読みでない方はこちらから
>> スペシャルティコーヒーの酸味について考える 講義編

目次

  • フレーバーホイールとは – 酸味表現をおさらい
  • 3つの酸味を実際に味わってみる
  • まとめ

フレーバーホイールとは – 酸味表現をおさらい

フレーバーホイールは、スペシャルティコーヒーの味や風味の表現方法を、カテゴリー別に円状にまとめたものです。

その中で、酸味表現としてよく使われるのは、以下3つです。

  • Tartaric Acid(酒石酸)
  • Citric Acid(クエン酸)
  • Maric Acid(リンゴ酸)

スペシャルティコーヒーの定義に、〜爽やかな明るい酸味特性があり〜、とあります。つまりスペシャルティグレードのコーヒーとは、味わいの中に酸があることが前提となります。

フレーバーホイールの表現には、今回のテーマである酸味のほか、苦みや甘み、香りなどのカテゴリーがあります。

3つの酸味を実際に味わってみる

今回は、3つの酸味を含むフルーツと、その酸のみを抽出した食品添加物サンプルを用意し、テイスティングしてみました。

酒石酸もクエン酸もリンゴ酸も、どれも食品添加物なので、スーパーのお菓子作り材料のコーナーや、スパイスのコーナーなどに売られているものを使用しました。

まずはフルーツから酸味を感じてみる

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まずはフルーツを食べて酸味を感じてみます。

– 普通に美味しいですね。酸味は感じられますけど、甘さとかの方が際立ってしまって、それぞれの酸味の違いはわかりにくい。

「自然の食品からその味だけを個別に感じるのは難しいですね。フルーツの酸味を頭でわかって、それを同じく自然の食品であるコーヒーの中に感じてみろというのは、とっても難しいと思います。」

食品添加物サンプルで酸味を感じてみる

続いて、食品添加物の酒石酸、クエン酸、リンゴ酸をそれぞれテイスティングしてみました。

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このように、いかにも薬品ですという容器に入って売られています。

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3種類とも白い微粒子ですが、結晶の形が違うためよく見ると違いがあります。

写真左から、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸です。

<酒石酸>
酸味のある果実、特にブドウに多く含まれるヒドロキシ酸。
酸味料などとして、食品に添加される。
後味にブドウの皮のような渋みが残ることが特徴。

<クエン酸>
柑橘類などに含まれるヒドロキシ酸。
レモンをはじめ柑橘類に多く含まれている。また、梅干しにも多量に含まれている。
刺さるようなシャープな酸味が特徴。

<リンゴ酸>
リンゴから発見されたヒドロキシ酸。
リンゴの酸味だが、ブドウにも存在する。
丸みをおびた柔らかい酸味が特徴。

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テイスティングは、それぞれ結晶のままだと味がキツいので、同じ濃度になるように水に溶かして行ないました。

– おお!これなら違いがわかります!

「クエン酸はシャープな感じですし、リンゴ酸は丸みを帯びた柔らかい印象です。酒石酸は後味に渋みが残るのが特徴です。ちなみに、必ずしもひとつのコーヒーにひとつの酸味というわけではなく、2種類が組み合わさっていたり、3種類すべてが感じられることもあります。このようなコーヒーは味が複雑になるので高評価になります。」

– ということは、これも混ぜてみると(3種類を全通りの組み合わせで混ぜてみました)、、、なるほど。混ぜてもそれぞれの特徴は消えないのですね。

コーヒーの酸味を感じてみる

そして、最後に実際にコーヒーの中の酸味を感じてみることに。

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テイスティングしたコーヒーは、グァテマラ、エチオピア、ブルンディの3種類。

– いままであまり気にしたことなかったですけど、こうして意識してみると、たしかに違いを感じますね。それぞれ酸味の個性が異なります。

Guatemala(グァテマラ) / El Aguacate(エル・アグアクテ)
・・・ブドウやワインのように奥深い渋みも併せ持つ酸味。
→ Tartaric Acid(酒石酸)

Ethiopia(エチオピア) / Yirgacheffe Aramo(イルガチェフ・アラモ)
・・・レモンのような爽やかでシャープな酸味。
→ Citric Acid(クエン酸)

Burundi(ブルンディ) / Rugori(ルゴリ)
・・・青リンゴのような丸みのある柔らかい酸味。
→ Maric Acid(リンゴ酸)

「ここまで振り分けできなくとも、スペシャルティコーヒーの酸味は何パターンもあるということだけでも感じ取れるようなれば、楽しみの幅はグッと広がると思いますよ。」

まとめ

2回に渡り、スペシャルティコーヒーの酸味について迫ってみました。

今回のテイスティングを通してわかったことは、3種類の酸味はそれぞれ異なる特徴があるということ。そして、コーヒーの酸味もあらためて意識して味わってみると、その違いを感じ取ることができるということです。

カッピングを通して、その酸味がフレーバーホイールで言うところのどの酸味なのかわかるようになるまでには、それなりのトレーニングと経験が必要ですが、酸味に違いがあるということだけでも分かっていれば、コーヒーの楽しみの幅は相当広くなります。

これから、スペシャルティコーヒーを楽しむ際は、ぜひ酸味を意識して味わってみてください。

商品情報

今回の酸味テイスティングに使用したスペシャルティコーヒーはこちらの3つです。

グァテマラ エル・アグアクテ
カップ・オブ・エクセレンス受賞!複雑で甘い風味!
酸味の分類は『Tartaric Acid(酒石酸) および Citric Acid(クエン酸)』です。

エチオピア イルガチェフ・アラモ
イルガチェフならではのフローラルなフレーバーと甘くてシロップのような質感。
酸味の分類は『Citric Acid(クエン酸)』です。

ブルンディ ルゴリ(在庫切れ)
2015年カップ・オブ・エクセレンス受賞のコーヒー豆。明るくて複雑な風味。
酸味の分類は『 Maric Acid(リンゴ酸) および Citric Acid(クエン酸) 』です。


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