アナエロビックの“限界値”を探る──発酵が強すぎると何が起きる?|スペシャルティコーヒーサブスク〈Beans Delivery Service〉vol.299

多種多様なコーヒー豆の違いとその個性、そしてなによりそのコーヒーの美味しさに夢中になれる、そんなコーヒー体験を毎月お届けする、スペシャルティコーヒーのサブスク”Beans Delivery Service“(BDS)。
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BDS MAGAZINE〈vol.298〉
こんにちは!
THE COFFEESHOP ロースター 萩原です。
毎週焙煎を行なっている横須賀ROAST WORKSですが、先週の焙煎分から明らかに焼き心地に変化がありました。
いわゆる“夏焙煎”に切り替えるタイミングが来た、ということです。
ということで、ロースター的目線でいうと、先週から季節は夏になりました!
今年もあの暑い日が続くのかと思うといまから気が滅入りますが、アイスコーヒーの抽出をおさらいして夏本番に備えていきましょう。
それでは、BDS MAGAZINE〈5月13日号〉スタートです!
COFFEE BEANS 1|
Mexico / Catuai Amarillo(メキシコ / カトゥアイ・アマリージョ)
久々に焙煎したメキシコのコーヒーは、りんご系の酸味とカラメルの甘さが同居する、シルキーなWashedプロセスです!あまり目にする機会の多くないメキシコのスペシャルティ。ですが、今回のロットはメキシコの秘めたポテンシャルを感じる素晴らしい仕上がりです。
温度が高いときにはフレッシュなりんご酸を、冷めるにつれてりんごの蜜のような印象があります。同時に常に並走するように感じるのはキャラメル系の甘さ。焙煎は比較的浅煎りにしていますが、それでもキャラメルがいるのはテロワールなんでしょうか?
これまであまり注目してこなかったメキシコですが、今後目を向けていいきたいと思わせてくれるロットになりました。
1990年に32人の小規模生産者が集まり、現在の「カトゥアイ・アマリージョ」を設立しました。
その名前は、明るい黄色のカトゥアイ種にちなんで名付けられています。
現在、このグループは16人の農家で構成され、ベラクルスの霧に包まれた高地(標高1,250~1,400メートル)で、約60ヘクタールのコーヒー農園を栽培しています。
30年以上の間に、この協同組合はコーヒーチェリーを仲介業者に売るだけの形態から、オーガニックかつフェアトレード認証を受けたパーチメントコーヒーを生産し、アメリカやヨーロッパへ輸出する組織へと変貌を遂げました。
年間で約18トンのオーガニック認証のパーチメントコーヒーを収穫しており、多様な樹木の陰で栽培することで、在来の生物多様性も保護しています。
コーヒー以外にも、年間120トン以上の天然肥料を生産するミミズ堆肥プロジェクト、45種類以上のコーヒー品種を扱う苗木園・品種コレクション、鳥の生息地や水産実験の場としても利用される保全用のラグーンなど、さまざまな活動を行っています。
また、子ども向けのコーヒー教育プログラムも先駆的に実施しており、これまでに500人以上の子どもたちに学びの機会を提供しています。
FLAVOR COMMENT
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浅煎り。
アップルやグリーンレモン、ほのかにトロピカルやハーブのような風味。シルキーな質感で、カラメルや冷めるとりんごの蜜のような甘さがあります。
BEANS DATA
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【生産者】16 small farmers
【農園】Catuai Amarillo Cooperative
【地域】Altas Montañas, Chocaman, Veracruz
【標高】1,250~1,400m
【品種】Bourbon, Caturra, Colombia(ブルボン、カトゥーラ、コロンビア)
【生産処理】Washed(ウォッシュト)
COFFEE BEANS 2|
Brazil / Fazenda Kaquend PN(ファゼンダ・カクェンジ・PN)
カクェンジ農園は、ミナス州南部の町カルモ・デ・ミナスにあり、1,100~1,500mの高地に位置します。
穏やかな気候と肥沃な土壌、適度な降雨量があり、良質なコーヒーの栽培に適しています。
農園主のジェンケイラファミリーは栽培の初めより、品種の多様性と品質に投資。
コーヒーの摘み取りは人の手によって行われ、生産処理されたのち、平地と乾燥棚(サスペンデット・パティオ)で乾燥されます。
コーヒーはサイロで60日から90日間寝かせた後、コカリーヴェ組合倉庫へ送られ、等級ごとに選別されたあと販売へ向けられます。
カクェンジ農園は2006年、リリー・コーヒー品質コンクールの最終候補に残り、2007年にはミナス州農業技術振興公社EMATERにより、ミナス・ジェライス州最良のコーヒーと評価されました。
2008年COEでは最高スコアの93.65点を獲得し第1位となった実績を誇り、まさにCOEが見つけ出した極上のコーヒーと言えるでしょう。
トップに感じるココアパウダーを使ったチョコレート菓子のような香りは、Kaquend農園で例年感じられる特徴。同時にチェリーやアップルといったフルーティなフレーバーも捉えられる、素晴らしいブラジルです。
農園を手掛けるジュンケイラファミリーは現在シングルオリジンで発売注のSerra das Tres Barras農園も所有する名門。ただのバランスがよく飲みやすいだけのブラジルでは終わらない、奥行きを感じさせる仕上がりはさすがです。
温度変化とともに、良質なブラジルがもつ複雑性を感じてもらいたい一杯です!
FLAVOR COMMENT
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中煎り。
ココアやチェリー、熟れたアップル、アーモンドのような風味。ラウンドな質感で、後味にミルクチョコやブラウンシュガーのような甘さが長く続きます。
BEANS DATA
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【生産者】Ralf de Castro Junqueira(ラルフ・デ・カストロ・ジェンケイラ)
【農園】Fazenda Kaquend(ファゼンダ・カクェンジ)
【地域】Carmo de Minas(カルモ・デ・ミナス)
【標高】1,100m~1,500m
【品種】Yellow Bourbon(イエローブルボン)
【生産処理】Pulped Natural(パルプトナチュラル)
COFFEE COLUMN|
アナエロビックの“限界値”を探る──発酵が強すぎると何が起きる?
アナエロビック(嫌気性発酵)は、ここ数年のスペシャルティコーヒーシーンで話題を集めているプロセスのひとつ。タンク内を密閉し酸素を遮断した状態で発酵をコントロールすることで、ベリーやラム、ワインを思わせる華やかで複雑なフレーバーが生まれます。いまや街のコーヒーショップに並ぶのも珍しくない光景になり、かなり一般化してきているようにも感じます。
しかし、当たり前になってきたことと同じくらいよく耳にするのが、「アナエロビックってあんまり得意じゃないんだよね」というお客様の声。実際、THE COFFEESHOPでも取り扱う機会は多くない精製方法になってしまっています。そこにはアナエロビックプロセスが抱える、“発酵を強くしすぎるリスク”が関係しているように思います。個人的な感覚からすると、アナエロビックにはある意味で『限界値』が存在すると考えています。
まず、過発酵が引き起こす問題のひとつが揮発性芳香成分の破壊。 もともとコーヒーの香りを形成するのは、ゲラニオール・フェネチルアルコール・ラクトン類といった比較的繊細な分子です。発酵が強すぎるとこれらが分解されたり、発酵由来のフレーバーによって上書きされてしまい、テロワールの特徴が消えてしまいます。ものによっては発酵由来の“味噌・醤油系フレーバー”が支配的になり、飲み心地も決して良いものではなくなっていきます。
また、アナエロビックが強めのロットには抽出時の過抽出リスクもつきまといます。 発酵によって細胞壁が崩れ、可溶性の成分が過剰に流出しやすくなるため、浅煎りでも濃度が急激に上がり、渋みやエグみを伴いやすい傾向にあります。抽出している肌感としては、極端にお湯の抜けが早い場合などがありますね。抽出が15秒ズレただけで味が豹変するロットもあり、扱いは意外と難しいのではないでしょうか。
本来、アナエロビックの魅力は“発酵由来のフレーバーでテロワールを補完する”ところにあります。スペシャルティコーヒーの味わいの背骨となる酸味を補い、味わいの軸を支える役割です。 しかし強すぎる発酵は〈テロワールを消し、発酵味だけが強くなる〉という逆転現象を招きます。こうしたロットに当たってしまうと、「アナエロビックってあんまり得意じゃない」という感想に行きついてしまうのだと思います。
最近では、各産地でも発酵をやりすぎないバランスが重視されるようになってきました。個人的な感覚から言っても、テロワールがしっかりと活きたアナエロビックのロットにも数多く出会っています。
個性は魅力ですが、過剰は美味しさの妨げにもなる。ある意味、アナエロビックの限界値は<発酵のキャラクターを、産地や品種の個性を壊さない範囲に収めること>になると思います。
そのほどよい「境界線」を見極めるのが、ロースターの腕の見せどころであり、アナエロビックが面白い理由ですね。
それでは良いコーヒーライフを!
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次回お届け予定のコーヒー|BDSシングルオリジンプラン
【PREMIUM CROP】Costa Rica / Santa Teresa 2000 La Montana G&E
Peru / Bilibran Tello SL9
BEANS DELIVERY SERVICE 次回発送→ 5月27日(水)予定
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過去のBDSお届けリスト
WRITER
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Daito Hagiwara
THE COFFEESHOPロースター
THE COFFEESHOPにて取り扱うすべてのコーヒー豆の仕入れと焙煎・クオリティコントロールを担当。日々焙煎の研究とコーヒー豆の品質チェックを行う。2024年 Next up Roasting Championship優勝。2025年 焙煎競技会 ROAR OF THE ROAST 2025 優勝
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