Monthly Beans Magazine｜2024年7月号 [vol.118]

オーストラリアのニューサウスウェールズ大学は2024年5月7日、超音波を使って味を損なうことなくコールドブリュー（低温抽出）コーヒーを3分以内で作る方法を開発したと発表し、ちょっとした話題になりました。

この研究では、エスプレッソマシンのポルタフィルターに独自の超音波伝達システムを搭載。通常なら長い時間のかかる水を使ったコーヒーの抽出を、1〜3分程度に短縮することに成功した、というものでした。

そもそも超音波とは、人間の耳には聞こえない高周波の音波のこと。超音波が液体に伝わると、液体中に微小な気泡が発生、これが破裂する際に強い圧力が生じるそうです。その働きによりコーヒー豆の細胞壁を破壊・乳化させて成分抽出を促し、低温の水でも効率的に抽出が行えるのだとか。なんだか難しそうな話ですね。

今回の研究で行われた味のテストでは、1分間で抽出したサンプルと、24時間水出しで抽出したサンプルとで、ほぼ同じ味わいになった、ということですが、果たしてどうなのでしょうか？

超音波抽出について調べてみると、そもそもの抽出原理が異なるはずなので、味わいは違ってくるのでは？と思っています。

一般的な水出しコーヒーは、低温の水にコーヒー粉を長時間漬けておくことで作りますが、これはより濃度の低い液体に成分が移行するという、浸透圧の原理を利用しています。この方法では抽出に時間がかかりますが、酸味も苦味も角がなく、まろやかな味わいに仕上げることができます。

対して、超音波抽出では前述の通り、コーヒー豆の細胞壁を壊し、油分を含む水溶性の成分を乳化させながら抽出が進みます。この方法では抽出時間が大幅に短くなるというだけでなく、コーヒーの香味成分（ネガティブな部分も含む）をまるっと溶かし出すような形になるはず。この油分を溶かし出す、という意味においてはお湯を使った抽出にも近いような気がします。

と、原理だけ考えてみたところで飲んだことがないので想定の域を出ませんが、興味深いテーマですね。実は今回のコラムを書くにあたって軽く調べてみただけでも、「超音波振動で5分で水出しが作れる！」と謳った商品がいくつか発見できました。中にはクラウドファンディング募集中のものもあったので、興味のある方は試してみてはいかがでしょうか？

（Roaster / Daito Hagiwara）

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それではみなさま、良いコーヒーライフを！

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