コーヒー焙煎という仕事|ローストマスターズチームチャレンジ後記
プロとしてスペシャルティコーヒーを提供するということは、いくつもの工程を抜かりなく行うことが重要な仕事となります。その中で『焙煎』だけは、他とは異質なところがあり、非常に面白い工程です。
今回の記事では、THE COFFEESHOP で焙煎を担当するロースター萩原に登場してもらい、スペシャルティコーヒーにおける『焙煎』がどんな仕事なのか、お伝えしていきたいと思います。
コーヒー豆がコーヒーになるまで
本題に入る前に、まずはコーヒーについておさらいしていきましょう。
スペシャルティコーヒーに限らず、コーヒーとは『コーヒーの木』という植物の種子であることはご存知のことと思います。
コーヒーの味や風味は、栽培環境や収穫後の乾燥方法によって異なり、その土地や生産者の技術が強く反映されます。
また、農作物である以上、毎年毎年同じものが出来上がるわけではなく、同じ産地のコーヒーでも昨年と今年とでは味が異なることも、スペシャルティコーヒーの楽しみの一つです。
収穫、選定、乾燥までの工程を終えたコーヒー生豆は、産地から出荷され、船便で日本に輸入されます。
焙煎とはどんな工程か
焙煎とは、コーヒーの生豆に熱を入れ、成分変化を起こす工程のことをいいます。
簡単にいうと、豆を焼く作業ですが、コーヒーの持つ個性を最大限引き出していく工程になるため、高いの技術と経験値が求められる、とても重要な作業となります。
スペシャルティーコーヒーの理念における焙煎の役割
さてさて。ではここからは THE COFFEESHOP で日々コーヒー豆を焙煎しているロースター萩原に登場してもらい、焙煎という仕事について聞いていきたいと思います。
Q:
まず、スペシャルティコーヒーの定義には『From Seed to Cup』というものがあり、栽培からカップに注がれるまでどの工程も重要であるとしていますが、その中で焙煎という作業はどんな役割を持っているのでしょうか?
ロースター萩原:
栽培や選定、生産処理、輸送、焙煎、抽出など多くのプロフェッショナルの手が介在するスペシャルティコーヒーですが、どの工程も非常に重要なものとなります。
ほとんどの工程において、マイナス要素を極力減らすこと、つまり100%の品質が工程を経るごとに90%、80%と大きく落ちてしまうのではなく、99.9%、99.8%という状態に止めることが重要視されます。
しかし、こと焙煎においてはこれがあてはまりません。焙煎はコーヒー豆に熱を入れて成分を変化させる技術なので、評価軸がまったく別のものになります。
同じ豆でも、浅煎りで表現するロースターもいれば、深煎りで表現するロースターもいる。そのどちらもが正解であるという感じです。
コーヒー焙煎士という職業|適正スキルは?
焙煎は、コーヒー豆のどの個性やポテンシャルを引き出すか、焙煎する人間が選んで進めるため、お店や焙煎人の理念のようなものが反映されやすい工程でもあります。
Q:
焙煎にあたる人は、どんなスキルを持っていれば良いでしょうか?
ロースター萩原:
大前提として、人間の味覚はブレるということがあるので、いかに味覚や嗅覚を客観的に使って判定できるかは大事だと思います。
味覚や嗅覚を客観、、、というと伝わりにくいかもしれませんが、要は自分で焼いた豆を過大評価しないように気をつけなければならないということです。感情論抜きで評価するって意外と難しいんですよ。
あとは産地や生産処理の情報を確認して、引き出したいポテンシャルを考え、味を予測する力も必要です。事前情報はあくまで一般論的なものでしかないので、プロとしての経験から、もっともお店としての理念やロースターとしてのこだわりに近づけられるようイメージします。
ゴールイメージが立ってからは、単純に試行錯誤の繰り返し。イメージした味が表現できるまで、テスト焙煎を繰り返すので、こういう作業を面白がれるメンタリティが土台にないと難しいと思います。
スペシャルティコーヒーを扱う店舗として、また一人のロースターとして
先日東京ビックサイトにて行われたスペシャルティコーヒーの祭典【SCAJ2018】。その中で行われた、焙煎の技術をチームで競う大会【ローストマスターズ チームチャレンジ 2018】にて、萩原が参加した関東Aチームは見事優勝することができました。
ロースター萩原:
賞をいただけたこと、とても感謝しています。良いチームに恵まれ、皆で熱心に取り組むことができたチャレンジでした。
一人での焙煎は自分との闘いでもあり、好きなことながらも時々孤独を感じてしまうこともあります。人間ですから。笑
チームでのチャレンジは、皆で試行錯誤、あーでもないこーでもないと、悩みや発見を共有できるのがいいですね。
Q:
今回のチームチャレンジで、貢献できたポイントはなんですか?
ロースター萩原:
チームの中では自分がもっともコーヒー業界歴が浅く、知識も少ないという認識はありました。
なので、劣る部分は先輩方に思いっきり助けていただきながらも、THE COFFEESHOP での日々の焙煎量、場数では劣らないと思っていたので、若輩ながらも遠慮なく自信をもって取り組ませていただきました。
日頃の場数が踏めるというのは非常にありがたいことで、THE COFFEESHOP をご利用いただいているお客様にも感謝です。
今後の展望|これからチャレンジしたいこと
Q:
いち焙煎人として、今後の展望はどんなものでしょうか?
ロースター萩原:
THE COFFEESHOP としては、これからもスペシャルティコーヒーをより面白く世に発信していこうと目論んでいるわけですが、その土台として当然なくてなならないのが高度で多様な焙煎技術だと思っています。
なので、自分自身は来年のJCRC(ジャパン コーヒー ロースティング チャンピオンシップ)を目指します。この大会は世界にもつながっている大会で、世界の技術に触れる良いチャンスになると考えています。
また、THE COFFEESHOP で一緒に働いている仲間たちも、各々得意分野の大会に出場する予定ですので、そのフォローをしっかり行っていきます。
まとめ
焙煎という仕事の役割、面白さ、そして奥深さ、伝わったでしょうか。
ロースター萩原自身、スペシャルティコーヒーを飲み物としてではなく、カルチャーとして広めていきたいという思いを強く持っています。
THE COFFEESHOP では、同じ思いのスタッフが集まり、日々いろいろと企んでは試してを繰り返し、スペシャルティコーヒーというものをさらに面白くすべく努力しておりますので、今後とも応援よろしくお願いいたします!
WRITER
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