ロースター萩原 インド訪問記録| Sandalkad農園 編

1月8日(木)〜1月15日(木)まで、ロースターの萩原がインドへ産地訪問へ!
マガジンでは訪問の記録として、農園の特徴やインドのコーヒー産業の状況などをお届けします。
今回は第二弾として、Sandalkad農園をご紹介。
日本では馴染みのある素材で特殊発酵に挑戦している農園です。
ぜひ最後までご覧ください!
Sandalkad農園までの道のり|インドの日曜日は人がたくさん
2026年1月11日
宿泊先のMysoreからインド南西部Coorgへ。
朝は昨日と同じカフェでモーニング。朝でもめちゃくちゃ人がいてさすがインドといった感じ。
インドでは中流階級の家にも使用人がいるが、日曜日は使用人もお休みになるため、家にいないで外出することが多いそうです。
MysoreからCoorgへは車で2時間。
CoorgはMysoreとはまた別民族の地域らしく、ペルシャとかイギリスの影響が強い。インドでは珍しく豚肉を食べる民族です。
他にも食卓に食パンが出てきたり、庭がイギリス風だったり、これまでとかなり違う感じ。サリーの着方とか、人の顔つきも違う印象があります。
Sandalkad農園に到着|7代続く伝統を守りつつ、スペシャルティコーヒーへ挑戦
①Sandalkad農園
7代続くコーヒー農園で、コーヒー以外にもカルダモンやペッパー・フルーツなど色々作ってる農園です。
標高は1,100mくらいで、この地域は基本的にコモディティが多いですが、Sandalkad農園7代目の今のオーナー・サムエルの代からスペシャルティコーヒーに取り組んでいます。
現状の比率はコモディティ8:スペシャルティ2ですが、来年は5:5まで持っていきたいそうです。
年間の生産量は比較的少なく、1.2tくらいの収穫量になるとのことでした。
農園内はめちゃくちゃ自然豊か。シェードツリーとして背の高いはココナッツや松の木などが生えていて、オーガニック農法を採用しています。1日目に見学したBalmadi農園と同様、基本的にチェリーの収穫は手作業で行われます・
Coorgの人は伝統的に森を神様として信仰していて、農園の中にはDevara Kaadu(神の森)という5エーカーくらいの区間がありました。ここには手をつけず、何百年も原生林として残してあるそうです。
動物も多く、猿が目の前を横切ったり、ゾウやイノシシも出没するそう。いろんな鳥の鳴き声が周りから聞こえてきました。
ピッカーさんは朝8時から仕事を開始。
集めたチェリーはBalmadi農園と同じく、広場に集めて丁寧にハンドソーティング。
Balmadiと比べて農園が広いこともあり従業員が多い印象でした。
そしてピッカーの方が若い!
自然に囲まれた農園とはいえ、街からとても近く道も整備されていて、かつ給料もこのあたりの他の仕事に比べて悪くないから人員の集まりが良いのだとか。
ピッカーのみなさんは基本的に社員として雇ってて、90人程度を雇用。家も提供してるそうです。
②精製はナチュラルが主体|日本人に馴染みのある素材を使用した実験的プロセスも
精製はナチュラルが中心でしたが、ウォッシュドとアナエロビック、その他特殊精製にも積極的に取り組んでいるそう。
その主な理由は2つ。
スペシャルティコーヒーとしてユニークなフレーバーを作っていきたいことと、気候変動への対応があげられます。
ナチュラルはその乾燥工程で気候の影響を大きく受けるリスクがあります。それよりも安定して高いクオリティ・量を維持しやすいウォッシュドは、スペシャルティに取り組む上では重要な稼ぎ頭になります。
また、設備投資もかなり本腰をいれています。現状アナエロはプラタンクで精製していますが、適正な発酵プロファイルが固まったらダブルウォールステンレスのタンクでの発酵に切り替えたいとのこと。
その方が量が作れ、かつ圧力を強くかけられるので発酵に良い影響があるそうです。
コモディティはコンクリートパティオ、スペシャルティコーヒーはビニールハウス内のレイズドベットで乾燥。
視察したときには、農園内で採れた野生のハーブと一緒に乾燥させる特殊プロセスも作ってました。あとでカップ取りましたがわりと程よい加減で悪くなかったです。
また、ウォッシュドプロセスで出る酸性の排水はしっかり分けて、酸性物質と浄水に分離させてから処理。
パルピングで出たカスカラは、黒糖と一緒にプラタンクで90日間醗酵させてカスカラティーを作っていました。
乾燥させる前のカスカラを使って煮出したティーにトニックウォーターを合わせたものを飲ませてもらいましたが、これがめちゃくちゃ美味い!!ラズベリーやアプリコットのジュースそのもの。日本で飲むカスカラティーとは異次元なくらい美味しかったです。ドライじゃないので輸入難しそうだけどなんとか入れられないか…
米麹を使った特殊発酵プロセス
この農園でいま力を入れているのが米麹を使った特殊発酵プロセス。
日本から輸入した麹で、酒造りからエッセンスを学んでいるそうです。
4年前にテストで作ったものが素晴らしく、スピリッツやシャンパン系のフレーバーがあったとのこと。
それをスケールするべく、トライアンドエラーの真っ最中。
アラビカ種もロブスタ種も試していて、手順を簡単に教えてもらいました。
①収穫したチェリーを軽く水洗い
②ベッドに広げて軽く乾かし、上から麹と米粉を混ぜた粉末をかける
チェリーは25kgに対して麹は200g。
麹菌は飛んで行きやすいので、米粉と混ぜることでうまく定着アクティベートするそう。
③麹とチェリーを手で優しく混ぜたら、上からビニールシートを二重にかけて朝まで置く
④翌朝、香りと温度をチェックして、良い感じであればそのまま続行
発酵には温度が必要なので、適切な温度27度くらいをうまくキープしてくれていれば良い感じ
簡単に言うとこんな感じだそう。
収穫が終わった夕方から開始して、21時くらいまで作業をしていました。
麹プロセスはまだ実験中なので、発酵の進行具合はYettuのViggneshが香りを嗅いで確かめたりしながら試行錯誤しているとのこと。
作業工程を聞いて、酒蔵の杜氏みたいだと思いました。職人の世界。
実際のところ、今のフェーズで出てきている麹プロセスはあんまりカップが良くないかなといった印象です。
質感がすごくラフだったので、Viggneshにもフィードバックしていて、早速今夜仕込むロットから発酵時間を調整してみると。
美味しいロットが生まれてくると嬉しいと思います!
③Sandalkad農園の人たち|とにかく働き者
収穫時にいたピッカーさんたちは夕方には帰り、遅番の男性スタッフが中心となって精製を担当。
みんな若くテキパキと仕事をしていました。
大きなプールとパルパーはコモディティ用、スペシャルティコーヒーはフローター除去からパルピングまで、すごく小さな機械と人の手で行っていました。
みんなとにかく真面目によく働く印象で、我々は20:00くらいにここを出発しましたが、発酵の進行具合を見るに、スタッフは深夜まで残っていそうな勢い。活気と勢いのある農園だなと感じました。
Sandalkad農園はロースター・カフェも運営していて、カフェは7店舗・焙煎豆卸など手広くやっている印象でした。
カフェの横はリゾートヴィラみたいになってて、45個のコテージが併設。施設内のレストランもモダンで清潔でした。
代表のサムエルは大の日本好きで、すごく勉強家な方でした。
SCAJにも来てたらしく、カフェには日本の抽出器具や、見慣れたブランドの豆袋などもたくさん。
このカフェでSandalkadのロットをカッピング。
ニュークロップのレッドハニーが1番良かった印象です。
ゲイシャナチュラルもまぁまぁ。アナエロも去年よりかなり良くなっていました。
伸び代が上がってきているのを感じる、いいカッピング会でした!
インドで見てきたバイオダイナミック農法
Yettu(Kaapi & Culture)のコーヒーは昨年から購入させていただいていますが、その際に提供された生豆の資料文書にあったのが『バイオダイナミック農法』という言葉。その内容を見ると、天体の巡りをもとに肥料を撒くとか、水牛の角を混ぜるとか、「あれ、もしかしてスピってる…?」と正直感じてしまっていました。
しかし、実際にインドに来てみて目の当たりにしたのは決してスピリチュアルではなく、実態に基づいた理論的な栽培模様でした。
バイオダイナミック農法で大切にされているのが、天体の巡りを読むこと。その情報から堆肥や植え付けのタイミングを計ります。
これは決して宇宙のエネルギーがどう、とかいう文脈ではなくて、天体の巡り=季節の巡り、すなわち雨期と乾季の巡りを意味しています。単に農作物として、適切なタイミングで行うための手段の一つなのです。インドでは昔からこういった巡りを大切に農業が発展したそうです。実際、農園から見る星空は本当に美しかったです。
細かく説明を聞くとちゃんと理にかなってる農法なんですが、それをニュージーランドの学者がバイオダイナミックと名付けてスピリチュアル系に捉えられた結果、いまのような広がり方になったのだと思います。実際、『バイオダイナミック農法』と検索するとスピリチュアルな話も出てくるのでいろいろグラデーションなんだとは思いますが、少なくともインドで見てきたものはいかがわしいものではありませんでした。
それが見れたのは今回の訪問の収穫の一つだったと思います。
Sandalkad農園で感じたこと
ここまで色々視察してカップを取って、わりとインドのコーヒーのイメージが変わってきた印象です(少なくともYettuの豆は)。
伝統的にコモディティが多く、スペシャルティコーヒーはまだ歴史が浅いので、品質向上の伸び代はすごくあると思います。インドのコーヒーによくあるウッディで重たい味わいは、単にソーティングや乾燥、精製が未熟だという部分もかなりありそう。
また、特殊精製が多く派手な味が多いというのも、日本の市場や好みとミスマッチしているだけなのでは?と感じました。現地はどこもフレグランスが強く食事も辛いので、国内だとそういったコーヒーが受けるのかもしれません。そこは上手くフィードバックしながら擦り合わせしていけば良いものが出来そうだと感じました。
Yettuもそれを望んでいるようで、なにかといえばViggneshは『ハギワラサン!』と呼んできて説明してくれ、意見を求めてくれました。僕は僕として、そういう役割を求められていることは予めわかっていたので、忌憚のない意見をお伝えさせていただきました。
現地でカップしたウォッシュドやハニーは良いものもあったので、プロダクトが出来たらサンプルをくれる約束も。とても楽しみです!
農園オーナーのサムエル。また日本でも会いましょう!
次回のマガジンは、インドでコーヒーが始まった土地 Chikmagalur 編!
今回のマガジンはここまで!
次回はインドのコーヒー生産が始まった場所、Chikmagalurをご紹介します。
ここでまず立ち寄ったのは農園ではなく、近隣からチェリーやパーチメントが集まるドライミル。コーヒーの生産・輸出における重要設備です。
ぜひお楽しみに!
やたら熱いコーヒーを飲むハギワラ
WRITER
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Daito Hagiwara
THE COFFEESHOPロースター
THE COFFEESHOPにて取り扱うすべてのコーヒー豆の仕入れと焙煎・クオリティコントロールを担当。日々焙煎の研究とコーヒー豆の品質チェックを行う。2024年 Next up Roasting Championship優勝。2025年 焙煎競技会 ROAR OF THE ROAST 2025 優勝
毎週日曜日18:30〜Instagram、YouTube、Xスペースでライブ配信中!
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