コーヒー豆の焙煎度に合わせて選ぶ!CAFEC 焙煎度別ペーパーフィルターを徹底検証!

2020.07.20


今回検証するのは、ペーパーフィルターです。え?今さら?いやいや、それが普通のペーパーフィルターではないんです。『焙煎度別ペーパーフィルター』という、なんだかキャッチーな商品。実際に違いがあるのか、検証していきます。

CAFEC 焙煎度別ペーパーフィルターとは

今回の検証素材は、『CAFEC焙煎度別ペーパーフィルター』。

CAFECとは、日本で唯一のコーヒー関連商品の総合メーカー・株式会社三洋産業が展開するオリジナルブランドです。コーヒー関連の器具や備品を製造する国産ブランドで、以前はHARIO V60用の円すい型ペーパーフィルターを製造も行っていました。

(2019年ジャパンハンドドリップチャンピオンシップ優勝の畠山大輝さんが使用した『アバカ円すいコーヒーフィルター』もCAFECの商品です。)

今回の検証では、CAFEC焙煎度別ペーパーフィルター3種類、その違いを確認していきます。コーヒーの抽出には、同じくCAFECより発売されている「フラワードリッパー」を使用しました。

フラワードリッパー

フィルターの違いはどこにあるのか

まずは、浅煎り用、中深煎り用、深煎り用の3種類のペーパーフィルターで、作りにどんな違いがあるのか、目視にて確認してみました。

真っ先にわかるのは厚みの違い。どれも100枚入りなのですが、ご覧の通り厚みが全然違っています。見た感じ、素材はどれも同じかと思うので、コーヒーを淹れた際に違いを生み出すのは、この厚みの差なのだろうか。

続いて、開封して中身を確認してみます。

おや?表面の加工が違う。

ペーパーフィルターの表面には「クレープ加工」という凹凸があります。アバカやV60にも、この加工はあります。で、今回の3種類はどうかというと。クレープ加工が3つとも明らかに異なっていることがわかります。

クレープ加工は、その高低差によってお湯の透過スピードが変わってきます。同じようにお湯を注いでも、落ち切るまでの時間に微妙な差が生じてくる。言い換えると、ドリッパー 内にお湯が留まる時間が変わるので、出来上がるコーヒーの味も変わってくるということです。

ロースター萩原コメント:
ペーパーの内側、粉と触れる面では、クレープの凹凸が高いほど粉の目詰まりを防ぎ、透過スピードが早くなります。これは主に、抽出後半のお湯の抜けに影響するイメージでしょうか。
反対にペーパーの外側、ドリッパーと触れる面では、クレープの凹凸が高いほど、毛細管現象によりお湯を外側に引っ張る力が強くなり、透過スピードが早くなります。こちらは抽出前半のお湯の抜けに影響しそうです。

3種類の焙煎度違いのペーパーフィルターは、厚みの差、そして内側と外側のクレープ加工の高低差によって、違いをつけているということですね。

当然、クレープに差をつける加工技術が必要となりますし、厚みのあるクレープをつけるにはそれだけ原料を多く使う必要があります。廉価なペーパーフィルターと違いが出るのも、納得ではないでしょうか。

同一銘柄のコーヒー豆で抽出 違いをチェック

では、実際にコーヒーを抽出し、その味の違いを確認していきます。今回はコーヒー豆の銘柄とレシピを固定した上で、ペーパーフィルターのみを変更。フィルターによる仕上がりの違い確認してみました。

使用したコーヒー豆は、THE COFFEESHOPで発売中(2020/7/16時点)の「コロンビア/エル・プラン」。焙煎度は、THE COFFEESHOPの基準で「中煎り」。3種のフィルターのどれとも一致しない表記の焙煎度のため、あえてこちらを選択してみました。

コロンビア/エル・プランのカップコメント:
シトラスやアップル系の爽やかな酸味があり、グリーンアップルや洋ナシ、ハーブのような風味を持つ。滑らかな質感で、ビターキャラメルのような甘さが長く続く。

抽出レシピ

粉量:19g
挽き目:中挽き
湯量:300g
湯温:92℃

蒸らし:40秒 +40g
第1投:40秒~50秒 +40g
第2投:60秒~70秒 +40g
第3投:80秒~90秒 +60g
第4投:100秒~110秒 +60g
第5投:120秒~130秒 +60g
→130秒(2分10秒)で注ぎきり。お湯が落ち切ったら抽出完了。

浅煎り用ペーパーフィルター

3種類の中で、最も薄いのが浅煎り用フィルターです。クレープ加工は、内側はツルツルで凹凸はほとんどなし、外側は若干ザラザラしているものの凹凸は控えめとった印象。

浅煎り用フィルター外側

浅煎り用フィルター内側

クレープ加工が控えめな分、お湯がホールドされやすく、落ち切りまでの時間が長くなる。と、予想…結果は以下の通りです。

落ち切りタイム:
2分28秒

浅煎り用フィルターで淹れたカップコメント :
ジューシー、フルボディ、グリーンアップル、イチヂク、ハーブ。
ジューシーな果実味が抽出でき、口に入れた瞬間に味わいのピークが来る印象。

この後、あと2種類の結果もお知らせしますが、先に言ってしまうと、浅煎り用フィルターが今回の3種の中で、最もお湯のホールド感が強く、抽出の最中もっとも長い時間お湯が溜まっていました。

一般的に、浅煎りの豆は酸味が明るくフルーティになる反面、深煎りと比べて抽出効率が低く、成分がお湯に溶け出しづらいという特徴があります。浅煎り用フィルターは、表面を滑らかにすることで、お湯と粉との接触時間を長くし、抽出効率を上げているものと思います。結果、浅煎りコーヒーの最大の長所である、フレーバーが引き立つような仕上がりになりました。

中深煎り用フィルター

続いては中深煎り用フィルター。3種の中で最も厚みのあるフィルターです。内側にはかなりはっきりとクレープ加工がしてあり、凹凸が大きく和紙に近いような手触り。外側も同様、強めのクレープ加工がされています。

中深煎り用フィルター外側

中深煎り用フィルター内側

3種類の中では、最も表面の凹凸が大きい。そのため、お湯の抜けがよくなり、抽出時間が短くなる。と、予想…結果は以下の通りです。

落ち切りタイム:
2分24秒

中深煎りフィルターで淹れたカップコメント :
ベリー、洋ナシ、キャラメル、ブライト。
軽い質感で、明るいアシディティ。
口に入れた瞬間から、フレーバーとアシディティが口腔内にフワッと広がる印象。
すっきりとした後味。

予想通り、3種の中で最もお湯の抜けが良く、抽出時間が短かったのはこれでした。抽出の最中もお湯が溜まらず、スルスルと落ちていくのが見てわかるほど。その効果か、フレーバーとアシディティ、甘さのバランスが良く取れていたことも特筆すべきポイントです。

今回の検証レシピは、そもそもバランス良く抽出できるように組み立てたレシピです。中深煎り用フィルターのお湯の抜けの良さが、その狙いを再現させたのでしょう。

一般的に中深煎りの豆は、フレーバーや酸味、甘さ、苦味といった、コーヒーの複雑な味わいをバランス良く味わうことができる焙煎度合いです。バランスの良い仕上がりになったのは、中深煎りコーヒーの特徴を活かした抽出ができた。ということですね。

深煎り用フィルター

ラストは深煎り用フィルター。3種類の中で中間の厚み。内側は少しザラザラとした手触りで、凹凸の大きさは浅煎り用の外側と同じくらいでしょうか。外側も控えめなザラザラ感ですが、内側よりは若干凹凸が大きくなっています。

深煎り用フィルター外側

深煎り用フィルター内側

内側と外側で、加工の仕方に微妙な差をつけていますね。果たしてこれがどのように影響するのか…結果は以下の通りです。

落ち切りタイム:
2分28秒

深煎り用フィルターで淹れたカップコメント :
黒糖、ビターキャラメル、ストーンフルーツ、フルボディ。
力強いボディ感があるが、酸味ではなく甘さと質感、後味が際立って感じられる。
口にいれた瞬間ではなく、飲み込む瞬間から後味にかけて味のピークが来る印象。
ビターキャラメルのような、長く甘い余韻が楽しめる。

意外にも、落ちきりタイムは浅煎り用フィルターとほぼ同じ。抽出前半の透過スピードは、深煎り用の方がやや早い印象でした。

一般的に深煎りの豆は、明るいフレーバーよりも甘さや質感に特徴が出るもの。深煎り用フィルターで淹れたコーヒーは、深煎りコーヒーの特徴がより明確に出てくるような仕上がりになりました。

お湯の抜け方に明確な違い|それによって変わった味とフレーバー

同じコーヒー豆で、3種類のペーパーフィルターを試してみた結果、明確に仕上がりに差がでました。うん、ペーパーフィルターの違い…侮れない。

お湯の落ちきりタイムには、そこまで大きな差は出なかったものの、抽出途中のお湯の抜け方に差が生じました。投入回数の少ない抽出レシピを組むと、より違いが明確になるかもしれませんね。

焙煎度別ペーパーフィルターは、クレープ加工の高低差によって、お湯の抜けるスピードが変わる様にできていることがわかりました。それぞれの焙煎度合いによって変わる抽出効率や、引き出したい要素を仮定し、検証した上で、それを最適化・最大化するように設計されているのでしょう。

ロースター萩原コメント:
注ぎ方や湯温、挽き目のコントロールなど、抽出技術の差が出る部分の微調整。それをペーパーフィルターが自分に代わって調整してくれる。とても画期的なプロダクツだと思いました。浅煎り用のペーパーフィルターを使って、深煎りのコーヒーを淹れたりするのも、また新しい発見があって面白いかもしれませんね。

次回、続編ということで、それぞれのフィルターに最適なコーヒー豆を探ってみたいと思います!


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