シングルオリジンの可能性|コーヒー豆の生産処理(精製)

2016.09.13


シングルオリジンコーヒーは、単一農地の豆といういう意味で使われる言葉ですが、スペシャルティコーヒーを奥深く知ろうとするのであれば、生産処理(生豆の精製)についても知っておくと、楽しみの幅が広がります。

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目次

  • シングルオリジン|マイクロロットという発想
  • 生産処理(生豆の精製)は大きく分けて三種類
  • 生産処理の違いを楽しむには

シングルオリジンからマイクロロットという発想へ

日本でのコーヒー文化におけるシングルオリジンという言葉は、2000年代より浸透し始めました。それまではストレートコーヒーという言葉がありましたが、より細分化されているという意味を込めて、シングルオリジンという言葉が使われています。
シングルオリジンとは、農園単位で銘柄を分けるという意味で使用されますが、さらに細分化されている場合、『マイクロロット』という言葉が使われます。

通常、収穫されたコーヒーの実は、産地や収穫時期がある程度同じのものであれば、それを一括りにし、その後の生産処理過程に進みます。しかしながらこの方法では、コストこそ抑えられるものの、生育環境の微妙な差(気候や地質)によって生じる個性が失われてしまいます。

それを解決するための方法が、マイクロロットという考え方です。大規模な生産ではなく、コーヒーの個性を最大限活かすべく、小規模の区切りで一銘柄とし、その豆に合わせた生産処理を行ないます。

マイクロロットでのコーヒーの納品(ROAST WORKS 豆保管庫にて:マイクロロットでの入荷)

スペシャルティコーヒーの産地では、この考え方が浸透してきているため、輸入にあたって生産者と日本人バイヤーが直接交渉し、購入されています(大量生産のコモディティコーヒーは先物取引で買い付けされています)。マイクロロットという発想は、生産者も良いコーヒーを作るほど適正な報酬を得ることができるので、作り手と買い手の双方にメリットがある考え方になっています。

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生産処理(生豆の精製)は大きく分けて三種類

マイクロロットという考え方を用いることで、コーヒーの可能性は大きく広がりました。小規模での銘柄付け、輸出が可能になったことで、生産処理にも個性を持たすことが出来るようになったのです。

生産処理とは、コーヒーの実を収穫した後、皆さんが見たことのある生豆の状態にするまでのプロセスのことです。生産処理は大きく分けて三種類あり、産地によって得意とする方法があります。

1、コーヒーチェリーをそのまま乾かす『ナチュラル』

アン・ウォッシュトとも言う『ナチュラル』は、コーヒーの実を収穫し、実の状態のままで広げて乾燥させる方法です。他の二つの方法に比べると、乾燥日数が長くなりますが、シンプルな処理方法です。乾燥した後は、乾いて堅くなった実を脱殻し、生豆を取り出します。

ブラジル、エチオピア、イエメンで一般的に使われる生産処理方法です。乾燥中、実の成分が豆に浸透すると言われており、独特の香りや甘み、質感の優れたコーヒーになります。

ナチュラルプロセスコーヒー

2、コーヒーチェリーから果肉を取り除き、しばらく水につけて洗い、乾かす『ウォッシュト

ウォッシュトは、コーヒーの実を【パルパー】にかけ、皮と果肉を取り除きます。その後、半日~1日程度水に漬け、パーチメント(生豆を覆う薄い殻)の周辺に残る粘着成分(ムスラージ)を自然発酵させることで取り除いていきます。

自然発酵させた後に水洗いすることで、残っていたムスラージを綺麗に洗い落とすことができます。その後、天日にて乾燥(もしくは機械による乾燥)工程を経て、パーチメントコーヒーと呼ばれる、薄い殻一枚のみを残した生豆を作り、最後にその殻を剥いて完了です。

パーチメントコーヒー

ウォッシュトは、ナチュラルに比べて工程数が多いため、とても手間がかかりますが、工程中に未熟な実や過熟な実をある程度取り除くことができるという利点があります。また、コーヒーの風味としては、もっとも酸味の印象が明るく出やすいという特徴を持っています。

3、コーヒーチェリーから果肉を取り除いて、乾かす『パルプトナチュラル』

パルプトナチュラルは、収穫したコーヒーの実を【パルパー】という機械に入れ、皮と果肉を取り除いた状態にし、乾燥工程に入るものです。ウォッシュトやナチュラルに比べると、パルプトナチュラルはあまり流通していません。コーヒーの実を剥いたあとパーチメント(生豆を覆う薄い殻)の周辺に残る粘着成分(ムスラージ)が、乾燥中に痛みやすく、管理が難しいということが理由にあります。

ただし、パルプトナチュラルは、ナチュラルよりも透明感があり、また、ウォッシュトよりも甘さがでやすく、両方の良いところをバランス良く表現できるプロセスになります。現在はブラジルやコスタリカで主に使用されている生産処理方法です。

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アフリカ、中南米などでは、このウォッシュトが一般的に使われています。似たような生産処理方法で、自然発酵させずに機械的にムスラージを除去する方法『パルプト アンド デ ムスラージド』(または『セミウォッシュト』とも言う)があります。

生産処理の違いを楽しむには

THE COFFEESHOP では、マイクロロットでの入荷を主に行なっています。小規模生産地によるコーヒーの個性とともに、生産処理の違いもぜひ楽しんでいただきたいと思っております。

生産処理の違いは、それぞれのコーヒー豆販売ページに記載されていますので、選ぶときの参考にしてみてください。焙煎度合いでも変化するコーヒーの風味ですが、生豆の段階ですでに違いがあることも知っておくと、選び方も変わってくると思います。それぞれの風味特性をザックリまとめてみると、下記のようになります。

  • ナチュラルは甘みが強い
  • パルプドナチュラルは透明感と甘さ
  • フリィウォッシュドは明るい酸味

中米では、ムスラージをミエル(蜂蜜という意味)と呼ぶため、パルプトナチュラルのことをハニープロセスと呼ぶこともあります。銘柄『コスタリカ・シュバマ・レッドハニー』などがこれにあたります。

レッドハニーは、ムスラージを100%残したまま乾燥させる方法ですが、前述の通り、ムスラージを残したまま乾燥すると豆を痛めてしまうリスクを伴うため、管理がとても重要になります。こうしたデリケートでリスキーな挑戦も、マイクロロットならではの特徴と言えますね。

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